「キオクシア (KIOXIA)」って聞いた事ありますでしょうか?最近はちょくちょく TV CM も流れているようなのでご存じの方も居られのではないかと思います。今回はこちらの SDカードを購入してみましたのでレビューしてみたいと思います。
■ 「キオクシア (KIOXIA)」?
「キオクシア (KIOXIA)」は、半導体メモリ及び SSD などの関連製品の開発・製造・販売を行っている会社です。元々は東芝のメモリ開発を行う 1部門でしたが、2017年に「東芝メモリ株式会社」として独立、その後 2019年10月に「キオクシアホールディングス株式会社」と社名変更して現在に至ります。
東芝メモリは「NAND型フラッシュメモリ」を世界で初めて発明・製品化するなど、メモリ業界では最先端を走っていた稼ぎ頭といった存在でしたが、2006年に約 6,600億円もの費用を掛けて買収した米国の原子力発電関連メーカーの「ウエスチングハウス」がもたらした巨額損失や粉飾決算などの相次ぐ不祥事によって急激に悪化した東芝の財務を建て直すため、東芝本体から切り離されることとなりました。その後、投資ファンドのベインキャピタルの投資助言を受け、日米韓の企業連合が旧東芝メモリ買収のために設立した「Pangea」に売却されました。
「Pangea」に全株式が譲渡された東芝メモリに東芝などが再出資を行った結果、2020年9月時点での「キオクシアホールディングス」への出資比率は、「新株式発行並びに株式売出届出目論見書」に拠ると Pangea が 56.23%、東芝が 40.64%、HOYA が 3.13%となっています。
キオクシアは、持ち株会社である「キオクシアホールディングス」として 2020年 9月18日~25日の間でブックビルディング(需要申告:実質的に購入のための抽選の申し込みのようなものです)が行われ、日米の大手 7社の証券会社による共同主幹事の元で 10月6日に証券コード(6600)で東証に上場する予定でした。IPO の株式数が多いので比較的当選しやすそうではありましたが、大口顧客であった Huawei との取引環境が米国政府による取引規制の影響を受けて不透明になったことなどから上場が延期されることとなりました。IPO後の時価総額は、かつて親会社だった東芝の現在の時価総額を大きく上回る 2兆1300億円程度になると見られていただけに大きな話題となりました。
■ キオクシアの microSDカードのラインナップ
キオクシアの microSDカードには用途や耐久性などの違いによる 4種類のグレードが設けられています。いずれも SD変換アダプタが同梱されます。
EXCERIA HIGH ENDURANCE |
EXCERIA PLUS |
EXCERIA |
EXCERIA BASIC |
|
---|---|---|---|---|
主な用途 | ドライブレコーダー、監視カメラ | 4K録画、写真撮影 | フルHD録画 | 標準画質録画 |
対応規格 | ||||
最大読出/書込速度 | 100 MB/s / 85 MB/s | 100 MB/s / 85 MB/s | 100 MB/s / - | 50 MB/s / - |
容量(GB) | 256/128/64/32 | 512/256/128/64/32 | 256/128/64/32/16 | 256/128/64/32/16 |
CPRM | 〇 | 〇 | ✕ | ✕ |
防水性 | IPX 7 | IPX 7 | IPX 7 | IPX 7 |
動作温度 | -25℃~85℃ | -25℃~85℃ | -25℃~85℃ | -25℃~85℃ |
保証期間 | 2年 | 5年 | 5年 | 5年 |
一般的なスマホ用であれば EXCERIA か EXCERIA BASIC で十分でしょう。デジタル一眼レフカメラ等(最近はもうミラーレスが主流になりつつあるようですが)、高速で連写を行ったり高解像度の動画撮影を行う場合は EXCERIA PLUS が、証拠映像撮影のために連続書込と信頼性が必要なドライブレコーダーや監視カメラ用途には HIGH ENDURANCE モデルが向いているようです。
■ Amazon限定販売の BASICモデルを購入
その中から今回は Amazon限定販売となる「EXCERIA BASIC」の 64GB のものを購入してみました。通常モデルとの違いは保証期間が 3年間に短縮されていることで、スペック等に違いは無いようです。最終的に ZenFone Max (M2) の写真保存用に使うつもりなのでこれで十分です。
「EXCERIA BASIC」にはどうやら日本製と台湾製のものが混在しているようですね。うちに届いた製品は台湾製でしたがまあ特に問題は無いでしょう。
ちょっと困ったのがパッケージの開封時。紙のパッケージの中にプラスチックのパッケージが収まっているのですが、これがまた実に開けにくい・・・。
" OPEN " と書かれている所から薄いフイルムを剥がして開けるのですが、あまりにぴっちりとくっついていたため、開けるのに非常に手間取りました。
予め exFAT でフォーマット済みだったようで、メインPC に AUKEYの「CB-C55」という多機能 USBハブ経由で差してみた所すんなりと認識されました。「CB-C55」については以下の記事で紹介していますので併せてご覧頂ければ幸いです。記事中では iPad Pro との組み合わせで試していますが、USB Type-C の接続ポートさえあれば PC でも問題無く使用することができます。
■ フリーソフト「H2testw」で SDカードの真贋チェック
SDカードは大容量化がどんどん進んでいます。さすがにまだ高価ですが、1TB の容量を持つ SDXCカードでさえ入手出来るようになっています。2018年には最大 128TB までの超大容量を実現する「SDUC」という次世代規格が策定されており、更なる大容量化の流れはまだまだ続きそうです。
さて、そのような流れの中、64GB や 128GB といった容量の SDカードの価格は大きく下がり、非常に入手しやすくなってきました。消費者としてとても有り難い限りなのですが、SDカードには " 偽造品が市場に蔓延っている " という問題が付き纏っており、購入時の大きなリスクとなっています。
Amazon で購入した場合はすぐに偽物と気付くことが出来れば比較的簡単に返品を受け付けてくれますが、中にはある程度の書き込みをしてみて初めてエラーが多発したり、書き込んだファイルが消失したりといった事が起きて正常な製品ではないと分かるような、中々に巧妙な手口を使われているものも存在しているようです。
「国内正規品」と表示のある製品を購入してこのような問題に遭うということはさすがに少ないと思いますが、SDカード購入時の注意点や、容量や通信速度を偽造した品でないことの比較的簡単な確認方法などを以下の記事でまとめてみました。少しでもお役に立てれば幸いです。
今回購入したキオクシアの microSDXCカードについても実際に出来る範囲で確認してみました。下は「H2testw」を立ち上げて書込・読込に問題が無いかチェックしてみた様子です。
SDカードの容量や書き込み速度にも拠るのだと思いますが、今回購入したキオクシアの 64GB の SDXCカードで 40分ちょっと掛かりました。まあ最初に 1回チェックしておけば十分なので、面倒くさがらずやっておいた方がいいと思います。
テスト後は「*.h2w」というファイルが SDカードにパンパンに書き込まれていますので使う前に exFAT で再度フォーマットしておきました。ここで明らかに容量がおかしかったりテスト中にエラーが出るようならさっさと不良品として報告して返品なり交換なりした方がよいでしょう。
■ ベンチ
使用するのに問題無さそうだと言う事も分かったので「CrystalDiskMark 7.0.0」を使用してベンチを取ってみました。メインPC の USB Type-Cポートに接続した AUKEY CB-C55 に差した状態と、Panasonic の Let's note CF-J10S の SDカードスロットに差した状態の 2種類取ってみましたが、10年程前のノートPC に搭載された SDカードリーダーでも十分な速度が出るものですね。
読込速度に関しては公称値 50MB/s とのことでしたが、倍近くの性能が出ているようです。書込速度も 35MB/s 程度とスマホで使うなど連写撮影したりしないのであれば十分な性能でしょう。アプリケーションを SDカード上に置くなど、ランダムアクセスの性能が欲しいのであれば「A1」対応の EXCERIA PLUS シリーズなどを選ぶべきでしょうね。
■ 最後に
とりあえず動作検証やベンチも取れたので当初の予定通り Asus ZenFone Max (M2) に組み込みました。特に何もしなくてもカードをすんなりと認識してくれています。Androidスマホの場合はカメラアプリで「保存先」に SDカードを指定してやるだけでいいようですね。これで残りのストレージ容量を気にしながら撮らなくて済みます。
キオクシアの microSDカードの課題は正規品の価格でしょう。ドライブレコーダーなどの信頼性の要求される「EXCERIA HIGH ENDURANCE」については十分に存在意義があると思いますが、市場にはより高速で安価な製品が溢れていますので現状の販売価格のままではかなり厳しいのではないかと思います。但し性能に関してはかなりのマージンが取られているように感じました。価格がこなれてくるようであれば「国内サポート」という本製品の魅力はより高くなるでしょう。
既に並行輸入品も広く出回っているようです。価格だけ見れば確かに非常に魅力的ですね。ただ、メーカー保証は効きませんし、ショップ保証もあったとしても期間が短いなど注意すべき点もあります。特に並行輸入品では偽造などのリスクも高いので、もし購入されたならしっかりと容量や読み書きに異常が出ないかといったことを確認しておくことを強くお勧めします。