改めて言うまでもありませんが、マウスと共にキーボードも PC を使う上で重要なインターフェイス。文字入力に欠かすことは出来ません。当然こちらも様々なメーカーから多種多様な製品が発売されているわけですが、マウス同様、実際のタイピング感覚は触ってみないと分からないもの。
今回は、PC の周辺機器を主に取り扱っているロジクールから今年の 11月に発売されたばかりの「MX Keys Mini」という、非常にコンパクトなワイヤレスキーボードを触らせて頂く機会を得ましたので、しっかりとレビューしてみたいと思います。購入をお考えの方の参考に少しでもして頂ければ幸いです。
後述しますが、この「MX Keys Mini」、同じロジクールから発売されているマウスとセットで使う事で「Logicool FLOW」という、複数の PC を操作する際に非常に魅力的な機能が使えるようになります。
※ 本記事執筆にあたってロジクール様より製品をご提供頂いています。記事執筆に
あたっては公平を期すよう細心の注意を払っておりますが、ご留意頂いた上でお
読み下さいますようお願い申し上げます。
■ まずはスペックの確認から
まずは「MX Keys Mini」の主なスペックを確認しておきましょう。日本国内で販売されているのは「JIS配列」の日本語キーボードのみのようで、残念ながら「英語配列」の製品が欲しい場合は割高になるのを我慢して個人輸入などするほか無さそうです。英語配列モデルの購入希望者は結構いると思うのでロジクールさんには是非対応して頂きたいところですね。
キーレイアウト | 83 キー日本語 JIS 配列 |
キー構造 | パンタグラフ方式 |
キースペック | キーピッチ:19 mm キーストローク:1.8 mm 押下圧:60 ± 20 g |
バックライト | スマートイルミネーション(近接センサーによる自動バックライティング機能) |
対応OS | Windows、Linux、mac OS、iPad OS、Chrome OS、Android |
接続方式 | Bluetooth Low Energy 、Logi Bolt |
電源 | 内蔵充電式リチウムポリマー電池(USB Type-C) |
本体サイズ | 約 296x132x21 mm |
本体重量 | 506.4 g(内蔵バッテリー含む) |
参考価格 | 13,680円(税込) |
保証期間 | 2年間 |
「Logi Bolt」というのはセキュリティ機能が高められたロジクール独自の新しいワイヤレス接続方式です。専用のレシーバーが必要で、従来の「Unifying」とは互換性がありませんのでご注意下さい。普段使用する分には Bluetooth Low Energy にも対応しているので困るようなことは無いと思います。
打鍵に対する耐久性は、ファンクションキーが 500万回、標準的なキーが 1,000万回となっているようです。パンタグラフ式のキーボードとしてはまずますなのではないでしょうか?「Easy-Switch」ボタン(キーボード左上の F1~F3 部分)でペアリングする機器を切り替える事により、最大 3台のデバイスまで登録することが可能です。もちろん Windows機や Mac など混在可能。
■ ハードウェアをチェック!
「MX Keys Mini」のカラーバリエーションは、ペールグレー、グラファイト、ローズの 3色が用意されています。セット販売もされている「MX Anywhere 3」というコンパクトサイズのワイヤレスマウスも同色で用意されているので、入力インターフェイスとしての統一感が取れるのはすっきりしていいですね。
まずパッケージを開けてみて気付いたのが、外箱も含め、緩衝材や包装にプラスチックやビニールなどが一切含まれていないのですよね。キーボードも薄い紙で包まれています。SDGs ってやつでしょうか。このあたりは環境意識が高い欧州の企業(ロジクールの本社はスイスにあります)らしいなと感じました。日本メーカーでも最近のソニーなんかは随分この方向にも頑張っているようです。
キーボード本体以外の付属品は、充電用の USB Type-C to Aケーブル(1m)、保証書と極簡単な使い方の書かれた紙となっています。基本的に Bluetooth接続で問題無いかとは思いますが、「Logi Bolt」のレシーバーは同梱されていませんので、必要な場合は別途購入する必要があります。
コンパクトなキーボードでは記号キーなどの一部の幅が半分になっていたり、ちょっとイレギュラーな配置になっていたりといったこともありがちですが、MX Keys Mini は非常にオーソドックスなキー配列になっていると思います。Mac と共用のため、最下列の配列は一般的な Windows PC のものと異なる部分もありますが、すぐに慣れるでしょう。指を置きやすいようにキーの中央部分が少し凹んでいます。
裏面上部の分厚くなっている部分にバッテリーが内蔵されており、これがチルトスタンドを兼ねているおかげで 5° 程の傾斜が付いてタイピングしやすくなっています。バッテリーは使用状況にも拠りますが、フル充電の状態で最⼤ 10⽇間、バックライトをオフにした状態なら最⼤ 5ヶ月間保つそうです。廃棄時にはバッテリーを取り外してから廃棄するようにとのことで、取り外し方の書かれた紙が入っていました。
充電用の USB Type-C コネクタはキーボード右上に電源スイッチと並んで配置されています。ただこの電源スイッチ、もうちょっと位置を考えて欲しかったですね。スイッチに出っ張りがある事と重心が良くないせいでキーボードを立てた状態でコンパクトにしまっておくということが出来ません。せっかくバッテリー収納部の分厚さがあるのなら有効活用してスタンドとしても機能させて欲しかったなと思います。
このキーボードに搭載されている「スマートイルミネーション」という機能ですが、キーボードに直接触れなくても 1cm ほど上に手を近付けただけでバックライトが点灯します。タイピングを止めて少しすると自動消灯もするので、これはバッテリーを長持ちさせるいい仕組みだなと思いました。白 1色なので光り方もうるさくなくて個人的には好みです。
手持ちのキーボードと比較してみました。左が こちらの記事 で紹介した「Keychron K1」、右が こちらの記事 で紹介した東プレの「REALFORCE 108HG-HiPro」との比較です。キー数の違いはあるとは言え、やはり持ち歩くとしたらこのサイズですね。何かしらケースなどに入れる必要はありそうですが。
「MX Keys Mini」はパンタグラフ式のキー構造なのでこれらの中では最もタイピング音が静かですね。タイピング時の打ち心地は一般的なノートPC と同じ様な感じです。キーボード本体が 1枚のメタルプレートで覆われているとのことでキーボードとしての剛性感も充分です。パチパチとしたパンタグラフ式らしい打鍵音ですが、机などにやや低音が響くかも知れません。
■ ペアリング
先程も書きましたが、ロジクール独自の接続方式である「Logi Bolt」は、同社のキーボード・マウスで以前から使われていた「Unifying」と互換性がありません。「MX Keys Mini」には Logi Bolt のレシーバーが付属していませんので、こちらの接続方法を使いたい場合は別途「Logi Bolt ワイヤレス接続⽤USBレシーバー(LBUSB1)」を用意する必要があります。
残念ながら私はこの Logi Bolt に対応したレシーバーを持ち合わせていませんので、こちらの記事では Windows 11 の PC と Bluetooth でペアリング方法についてご紹介しておきます。
Windows のスタートボタンから「設定」を立ち上げたら「Bluetooth とデバイス」を開きます。右上に「+ デバイスの追加」があるのでクリックして下さい。次の「デバイスを追加する」のダイアログで「Bluetooth」を選択し、MX Keys Mini に登録したい番号(1~3)の「Easy-Switch」を 3秒間長押ししてペアリングモードにさせます(LED が高速点滅します)。少しするとキーボードが検出されるので、MX Keys Mini を選択し、パスコードをタイプすればペアリング完了です。
iPad の場合は先に MX Keys Mini をペアリングモードにしておき、iPad の「設定」→「Bluetooth」で MX Keys Mini を選んでパスコードをタイプするだけです。Mac についてはデバイスを持っていないのでよく分かりません。「こちら」をご覧になってみて下さい。
尚、Bluetooth で接続するためにはレシーバー側が「Bluetooth Low Energy」に対応していることが必須のようです。つまり、Bluetooth 4.0 未満のバージョンのレシーバーとは接続出来ないようなのでご注意下さい。MX Keys Mini のバッテリー保ちが良いのはこのおかげなのですね。例え Bluetooth に対応していたとしても古いノートPC(但し Windows 10 以降) などと接続するには Bluetooth 4.0以降(BLE)の規格に対応した Bluetoothレシーバーか、Logi Boltレシーバーの購入が必要になります。
また、PC 起動時に BIOS(UEFI)に入りたい場合は、Bluetooth接続のキーボードでは入ることが出来ない点にもご注意下さい。PC の Bluetooth機能は、PC が起動された後 Bluetoothのドライバーがロードされて初めて使用可能となります。MX Keys Mini が有線接続にも対応していればケーブルを繋ぐことでどうにでもなるのですが、残念ながらワイヤレス接続のみの対応なのですよね(ケーブルを繋いで充電しながら使用することは出来ますが)。こうした場合も Logi Bolt のレシーバーが必要になります。
■ 「Logicool Options」
キーボードのカスタマイズを行うことの出来る「Logicool Options」は、Windows と Mac 向けにそれぞれ用意されています。ソフトウェアは「こちら」からダウンロード下さい。
インストール先の指定は出来ません。途中で「製品強化にご協力ください」と、MX Keys Mini の診断データと使用データの提供を求められますが、「はい、分析データを共有します」を選んだ場合、その後インストールプロセスが止まってしまう事があるようです。そうなってしまった場合は、一旦 Logicool Options をアンインストールし、再インストール後「いいえ、共有しません」の方を選んで下さい。
Logicool Options の利用にはアカウント作成が必須です。ログインすることで MX Keys Mini の設定がクラウドにバックアップされ、再インストールしたり他の PC にインストールした際にすぐに元の設定でキーボードを使い始めることが出来るようです。
アカウント作成・ログイン時は、途中で一旦 Webブラウザでの操作に遷移します。アカウントの ID としては手持ちの eメールアドレスの他、Apple ID や Googleアカウントなどを利用する事も可能です。ログインが完了したらまた Logicool Options に戻ってきます。
初回起動時はメディアキーの説明が一通り表示されます。マイクミュートがボタン 1つで出来るのはオンライン会議などに参加する際に便利そうですね。デフォルトの状態では MX Keys Mini の最上段は「メディアキー」として様々な機能が割り当てられていますが、Logicool Options で「標準のファンクションキーとして F1~F12 を使用」にチェックを入れるか、「fn + esc」キーを押下することで「ファンクションキー」としての割り当てに変更することが可能です。
Logicool Options でマウスカーソルを乗せると緑色の枠が付く最上段の一部のキーは割り当てを変更することが可能です。例えば右上のキーは標準で「Delete」キーとして割り当てられていますが、スリープやシャットダウンボタンとして設定を変更することが出来ます。
また、ちょっと分かりにくいですが「増加」というところをクリックすると MX Keys Mini のファームウェアバージョンやシリアル番号の確認、バックライトの無効化、Logicool Options の更新などが行えます。ここだけちょっと翻訳が変な感じですね。
■ 「MX Anywhere 3」と組み合わせて使うとより便利に!
「MX Keys Mini」はもちろん単体で使っても構いませんが、「MX Anywhere 3」という同社製のワイヤレスマウスと組み合わせることで「LOGICOOL FLOW」という機能を利用することが出来るようになり、更に快適に使う事が出来るようになります。さすが隣に置いたときのバランスもいいですね。
「MX Anywhere 3」と「LOGICOOL FLOW」の使い方については以下の記事でレビューしていますので、併せてお読み頂ければ幸いです。
特筆すべきはこの「LOGICOOL FLOW」、マウスカーソルを画面の端に持っていくだけでマウスだけで無くキーボードまでセットでペアリングする PC を切り替えてくれるのですよね。オマケに Windows PC と Mac の間でまで行き来できるというから驚きです(当然両方の PC に Logicool Options をインストールした上で LOGICOOL FLOW を有効化しておく必要はありますが)。複数の PC を使い分けている方にとっては非常に便利な機能です。
ただ、「MX Keys Mini」と「MX Anywhere 3」のセット販売があるなら USBレシーバーは「Logi Bolt」対応のものをセットにして欲しかったですね。本来「MX Anywhere 3」に付属している USBレシーバーは「Unifying」対応のものですが、「Logi Bolt」対応の USBレシーバーが付属した「MX Anywhere 3 for Buisiness」という製品が既に発売されているようなので・・・。
■ コンパクトなワイヤレスキーボードをお探しの方にお勧め
「MX Keys Mini」を使用してみたところ、「Insert」「Delete」キーはキーボード右上にあるものの、「Home」「End」「Page Up」「Page Down」キーが無い点を不便だなと感じました。ただ、こちらに関しては説明が無いだけで、以下のキーの組合せにそれぞれ割り当てられていました。
Home | fn + ◀ |
End | fn + ▶ |
Page Up | fn + ▲ |
Page Down | fn + ▼ |
今回 MX Keys Mini を使ってみるまで実は私はワイヤレスキーボードにあまり良いイメージを持っていませんでした。以前(といってもだいぶ前ですが)使ったことのある Bluetooth接続のキーボードは、節電のためにキーボードがスリープ状態に入っていると打ち始めの 1文字目を脱落させてしまうことが多かったのですよね。ですが、さすがに Bluetooth のバージョンも「5」まで上がってかなり洗練されてきたのか、もうそんな心配は必要なさそうです。キーボードが休止状態になっていても瞬時に立ち上がってくれるおかげで 1文字目から取りこぼすことが無いようでした。
フル充電状態から 10日間使用可能と謳われているとおり、1週間ほど毎日ガシガシタイピングしてみましたが、バッテリーの保ちは非常に良いと感じました。いや、ほんとワイヤレス式キーボードも普通にストレスなく使えるようになりましたね。テンキーが必要無い方、複数の PC を 1台のキーボード&マウスで操作したい方には特にお勧め出来る製品だと思います。