私の家でメインルーターとして使っている Yamaha の「RTX830」には WAN を繋ぐポートを入れても 5つしか LANポートがありません。さすがにこれでは足りないので、「SWX2300-16G」をメインスイッチとして、更にルーターの側に IP電話用に購入した「NVR500」も使えるようにしているのですが、その IP電話サービスの「SMARTalk」が来年 2月一杯でサービス終了となってしまいます。 IP電話サービスは利用者の減少から撤退する事業者が相次ぎ、個人が加入出来るサービスは本当に少なくなってしまいました。「SMARTalk」は普段使わなくても費用は発生せず、使った分だけ請求が来るので非常に使い勝手が良かったのですが致し方ありません。
通話料の他に基本料金を払ってまで IP電話を使い続けたいというわけでもなかったので、「NVR500」は取っ払って新たに L2スイッチを導入することにしました。ついでに 10年くらい前に引いた LANケーブルも CAT6A で引き直しておくことにします。
購入したのは Yamaha の「SWX2210-8G」という 8ポートのスマート L2スイッチ。「スマート」と言うだけのことはあって、Web GUI が使えたり VLAN を切ったり LAG が構成出来たりと、かなり機能は充実しています。Yamaha のネットワーク機器は基本的に業務用の製品ですが、ドキュメントが非常に充実しているので個人でも使いやすくて好きです。そしてとにかく丈夫!ほんとに壊れませんし、周囲の気温が 50℃ の環境でも動作保証がされています。
かなりしっかりと梱包されています。型落ちモデルとは言え、この 8ポートのものは 1万円ちょっとと、非常にリーズナブルな価格で入手可能。
筐体は放熱性に優れた金属製で、電源は内蔵されているので ACアダプター不要です。付属品は取扱説明書類のほかに電源ケーブル、電源ケーブルの抜け防止金具、マグネットシート、ゴム脚でした。マグネットシートは鉄製の壁面(机の横など)に設置するためのものです。コマンドリファレンスは含まれていませんので、下記リンクより取扱説明書の PDF と共にダウンロードして入手しておくとよいでしょう。
「コマンドリファレンス」の PDF マニュアルは、2024年11月の時点でファームウェアバージョン「Rev.1.02.13」に準拠したものが置かれています。サポート期間が非常に長いことも Yahama のネットワーク製品のいいところ。
LANポート自体には LED が無く、隣でまとめて通信状態が表示されるようになっています。コンソールポートはありません。ファンレスなので一般(逸般?)のご家庭でも使いやすい。
筐体横のネジを外せば簡単に内部にアクセスすることが出来るので、ちょっと中を覗いてみました。電源は別基板になっており、整然と部品が配置されていてニチコンのコンデンサーが使われているなど作りも良さそうです。
左が「SWX2300-16G」の Web GUI、右が「SWX2210-8G」の Web GUI です。「SWX2300-16G」 はかなりシンプルな管理画面でしたが、一世代違う「SWX2210-8G」ではトラフィックの状態などもグラフィカルに確認出来るようになっています。また、「SWX2300-16G」ではリンクアグリゲーションの設定などは CUI を使う必要がありましたが、「SWX2210-8G」の方では Web GUI だけでほとんどの操作が行えるようになっています。これなら CUI は使いたく無いという人でも扱いやすいでしょう。
Yamaha の「L2MS(Layer2 Management Service)」に対応した RTX830 などのルーターがあれば ” ネットワークの見える化機能 ” を使用して機器情報や端末情報などの確認・変更を一元管理することも可能です。スイッチでループが発生したりした際に目で見て障害箇所を特定出来たり、未登録の端末が接続されたらメールで通知するようにしたりする事も出来るそうです。
■ まずはファームウェアを更新
「SWX2210-8G」を購入した時点のファームウェアバージョンは「Rev.1.02.10(2022-03-24)」でした。現在は「Rev.1.02.13(2023-11-29)」というファームウェアが公開されているので、さっさと更新しておくことにします。
尚、内部で使われている部品の変更があったとかで、「Rev.1.02.11」以降のファームウェアを適用するとそれ以前のファームウェアに戻すことは出来ないようですが、基本的に新しいファームウェアほど安定性は上がるのでまあ気にする必要はありませんね。
CUI からでも更新出来ますが、わざわざ CUI を使わなくても Web GUI から簡単に行うことが可能です。ファームウェア更新後に再起動されますが、「SWX2210-8G」の起動にはやや時間が掛かりますね(2分くらい?)
CUI のコマンドは基本的には「SWX2300-16G」と同じですが、機能の差により若干存在しないコマンドがあるようです。
「ntp.nict.jp」から時刻を一定時間で同期するようにしておき、「SWX2210-8G」の LAN上での IPアドレスを固定、IGMPスヌーピングの設定確認などを行って使用開始しました。
■ 「SWX2210-8G」と「SWX2300-16G」をリンクアグリゲーション
「SWX2210-8G」と「SWX2300-16G」はどちらもリンクアグリゲーションに対応しているので、スイッチ間の通信に設定しておくことにします。但し、「SWX2210-8G」は「動的リンクアグリゲーション」で使用される「LAPC(Link Aggregation Control Protocol)」には対応していないので、「静的リンクアグリゲーション」で設定(「SWX2300-16G」の方は両方に対応)。
※ 注意:リンクアグリゲーションを使用する際は双方の機器で設定が完了してから ※
※ 2本以上の LANケーブルを繋ぐこと!(ループが発生します) ※
- 「SWX2210-8G」側の設定
「SWX2210-8G」の設定は Web GUI 上で簡単に行うことが可能です。
Web GUI の「詳細設定」タブから「リンクアグリゲーション」を選び、「インターフェースの一覧」で「新規」に進んで LAG を構成したい LANポートを選択するだけです。
- 「SWX2300-16G」側の設定
「SWX2300-16G」の Web GUI は残念ながらリンクアグリゲーションの設定までは行えませんので、CUI を使った設定が必要です。
SWX2300>enable SWX2300#configure terminal Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z. SWX2300(config)#
Windws 11 の「Windows PowerShell」から telnet で「SWX2300-16G」にログインし、「特権EXECモード」を経由して「グローバルコンフィグレーションモード」に移行。
ちなみに Windows 11 で telnetクライアントを利用可能にする方法については以前に下記の記事でご紹介したのですが・・・ ” 24H2 ” では、「設定」→「システム」→「オプション機能」→「Windows のその他の機能」に移動しているようです(近日中に記事を新しくします)。
今回はポート1 とポート 2 をリングアグリゲーションに設定してみます。
SWX2300(config)#interface ge1 SWX2300(config-if)#static-channel-group 1 SWX2300(config-if)#exit
「グローバルコンフィグレーションモード」から更に「個別コンフィグレーションモード」に移行し、ポート 1 をスタティック論理インターフェース(group 1)に所属させました。
SWX2300(config)#interface ge2 SWX2300(config-if)#static-channel-group 1 SWX2300(config-if)#exit
続いてポート 2 をスタティック論理インターフェース(group 1)に所属させました(同じく「個別コンフィグレーションモード」)。
SWX2300#show static-channel-group
% Static Aggregator: sa1
% Load balancing: src-dst-mac
% Member:
ge1
ge2
「特権EXECモード」に戻り、スタティック論理インターフェースの状態を確認にたところ、無事設定出来ているようです。
SWX2300(config)#interface sa1 SWX2300(config-if)#no shutdown SWX2300(config-if)#exit
再び「個別コンフィグレーションモード」で「sa1」インターフェースに「no shutdown」コマンドを投入してスタティック論理インターフェースを有効化します。
ここまで設定が終わったら晴れて LANケーブルを接続!通信状態を確認しておきます。
SWX2300#show interface sa1
Interface sa1
Link is UP
Hardware is AGGREGATE
ifIndex 65, MRU 1522
Interface counter:
input packets : 36130464
bytes : 38449158189
multicast packets: 125120
output packets : 39093797
bytes : 41596875234
multicast packets: 626633
broadcast packets: 325540
drop packets : 53
大丈夫そうですね。
SWX2300#write
Building configuration...
[OK]
設定が終わったら「write」コマンドで config の保存を忘れずに!以上でスイッチ間(「SWX2210-8G」と「SWX2300-16G」)のリンクアグリゲーションが完了しました。ここまで来たら Wi-Fi アクセスポイントも Yamaha で統一してしまいたいところですが、高い上に対応規格がちょっと古いのですよね・・・。安定性、堅牢性は抜群なのですが、業務用途向けの機器ということでやや保守的なところが玉に瑕。