Yamaha のルーター(RTXシリーズ)では独自の CLI が採用されていますが、同社のスイッチ(SWXシリーズ)では業界標準的な Cisco系の CLIが採用されているようです。幸いこれまで Allied Telesis のスイッチを使っていたのでよかったですが、Yamahaルーターしか触っていないとちょっと戸惑うかも知れませんね。なんでルーターとスイッチで CLI体系が違うんだと(苦笑)。
「SWX2300-16G」では、搭載されている「LANマップ Light」という Web GUI からだけで一通りの設定は済ませることが出来るのですが、CUI で操作する事も出来るよう基本的な操作コマンドについて個人的にメモしておく事にします。
尚、「SWX2300-16G」のコマンドリファレンスについては PDF で以下のリンクから取得可能です。
■ 「SWX2300-16G」との接続
ターミナルエミュレーターには「Tera Term」を使わせて頂くことにします。「Tera Term」は、「Tera Term Pro」の原作者の後を継いでオープンソースで開発が続けられているフリーウェアです。
「Tera Term」をコンソールターミナルとして使う場合のパラメーターは以下の通り。
通信速度:9,600 bps | ストップビット:1 |
データビット:8 | フロー制御:なし |
パリティ:なし | ー |
「SWX2300-16G」のコンソールポートとの接続には以下の製品が使用できることを確認しています。
コンソールケーブルを PC と接続し、「Tera Term」を起動したら「新しい接続」というダイアログボックスが表示されるので、「シリアル」を選択すれば「SWX2300-16G」が PC とシリアル接続されます。パスワードの入力を求められますが、初期状態では設定されていないのでそのまま「Enterキー」を押下してOKです。
Telnet で接続する場合は、「ホスト」に名に「SWX2300-16G」の IPアドレスを入力し、「サービス」で「Telnet」を選択すれば接続されます。
コンソールケーブルを使用せず、PC から LAN経由で Telnet を使う場合は、Windows 11 のスタートボタン右クリックから「ターミナル(Windows PowerShell)」を起動し、「o 192.168.100.240」の様な形でアクセスしたい機器の IPアドレスを入力して下さい。Windows 11 で Telnetクライアントのセットアップが済んでいない場合は以下の記事も参照下さい。
操作感については「Tera Term」を使おうが Windows の「ターミナル」から Telnetクライアントを使おうが大差ありません。お好きな方でどうぞ。
■ コマンド入力モードの種類について
ログインに成功すると、以下の様な画面にコマンドプロンプトが表示されます。
SWX2300-16G Rev.2.00.16 (Mon Oct 7 10:16:34 2019) Copyright (c) 2015-2019 Yamaha Corporation. All Rights Reserved. SWX2300>
ログインしたての状態では、コマンド入力モードが「非特権EXECモード(ユーザーモード)」になっています。コマンド入力モードには、「非特権EXECモード」「特権EXECモード」「グローバルコンフィグレーションモード」「個別コンフィグレーションモード」の 4つのモードがあり、特定のコマンドを入力するとコマンドプロンプトがそのモードに応じたものに変化し、権限が昇格/降格します。
コマンド入力モード | コマンドプロンプト | 上位の権限へ移行するコマンド | 下位の権限へ移行するコマンド |
非特権EXECモード | SWX2300 > | enable | exit、logout |
特権EXECモード | SWX2300 # | configure terminal | disable |
グローバルコンフィグレーションモード | SWX2300 (config)# | interface など | exit、end |
個別コンフィグレーションモード | SWX2300 (config-if)# | ー | exit |
「非特権EXECモード」「特権EXECモード」では、「logout」と入力する事で直接操作を終了してログアウトさせることが可能です。また、「個別コンフィグレーションモード」とは、 LAN/SFP ポートや VLAN インターフェース、 QoS など特定の項目に対する詳細な設定を行うためのモードの総称です。
コマンドプロンプトのプレフィックスは、初期状態ではホスト名として「SWX2300」が表示されるようになっていますが、「 hostname」コマンドを使用することで変更する事が可能です。SWX2300 を複数使用している場合などは変化を付けておくことで管理がし易くなります。
「ホスト名」は、グローバルコンフィグレーションモードで以下の様に指定して変更します。
SWX2300(config)# hostname Switch-012
上記の例では、「SWX2300(config)# 」から「Switch-012(config)#」にコマンドプロンプトのプレフィックスが変化します。変更した場合は config の保存(save)を忘れずに。
■ SWX2300 の config(コンフィグ)について
SWX2300 の config(起動時に読み込まれる設定)は、以下の 3種類が存在します。
running-config | RAM上で管理され、コンソールなどで操作した内容が即座に反映される |
startup-config | 編集した内容を ROM に 2つまで保存し、起動時に切り替えて使う事が可能 |
default-config | ハードウェア上に保存されていて一切の編集・参照不可 |
「running-config」は、RAM上で管理されているため、電源を切ったり再起動したりすると飛んでしまいます。設定が完了したら「startup-config」として SWX2300 に書き込んでおく必要があります。
保存された「startup-config」は SWX2300 のディップスイッチで 2種類を切り替えて使う事が可能です。「default-config」は、「startup-config」が存在しなければ起動時に SWX2300 が読み込んで実行されます。「default-config」にはパスワードは指定されていません。
・config の内容表示
config の内容表示は以下のコマンドにて。「特権EXECモード」または「個別コンフィグレーション
モード」で実行することが可能です。
SWX2300 # show runnning-config
「startup-config」の内容を表示させたい場合は、「running-config」を「startup-config」で置き換
えて下さい(番号指定可能)。
・config の保存
「running-config」の保存方法は以下の通り。「特権EXECモード」で「write」または「copy」コマ
ンドを実行して行います(write は copy コマンドと置き換えて下さい)。
SWX2300 # copy running-config startup-config [番号]
[番号] は「1」か「2」で指定を。省略した場合は SWX2300 本体のディップスイッチで設定されてい
る方に書き込まれます。
・startup-config の消去
「特権EXECモード」で「erase」コマンドを使って startup-config の消去が可能です(番号省略時は
ディップスイッチの設定に従う)。
SWX2300 # erase startup-config [番号]
・startup-config のコピー
「copy」コマンドで startup-config のバックアップを取ることが出来ます(特権EXECモード)。
SWX2300 # copy startup-config [コピー元番号] [コピー先番号]
■ ファームウェアの更新と再起動、初期化方法
・ファームウェアの更新
SWX2300 購入時のファームウェアバージョンは、「2.00.16(2019.10.7)」でした。「2.00.17」と
いうバージョンが公開されているようなので、更新しておく事にします。もちろん Web GUI 上でも
行えるのでどちらでも構いません。CLI では「特権EXECモード」で以下のコマンドを入力。
SWX2300 # firmware-update execute
Webサーバーに置かれているファームウェアと現在実行中のファームウェアを比較し、更新可能であ
ればリビジョンアップを実行します。確認を求められるので、” Y ” または ” N ” を入力。
SWX2300#firmware-update execute Found the new revision firmware Current Revision: Rev.2.00.16 New Revision: Rev.2.00.17 Downloading... Update to this firmware? (Y/N)y Updating... Finish
無事リビジョンアップ完了!更新中は全ての LED が点灯し、リビジョンアップが完了すると自動的に
再起動されます。再起動も含めて 2~3分程度は掛かるようですね。
・システム再起動
SWX2300 には電源スイッチがありません。システムを再起動するには、電源ケーブルを抜き差しす
るか、「特権EXECモード」で以下のコマンドを実行する必要があります。
SWX2300 # reload
「running-config」を保存していないと再起動時に飛んでしまうのでご注意下さい。
・システム初期化
SWX2300 を工場出荷時の状態に戻す方法です。「特権EXECモード」で以下のコマンドを入力。
SWX2300 # cold start
■ 「SWX2300-16G」の初期設定
初期設定として、いくつかのコマンドを投入しておくことにしました。
・時刻管理
タイムゾーンを「JST」に設定し、1時間毎に NTPサーバーの「ntp.nict.jp」にアクセスして時刻を同
期させるようにしておきます。コマンドの入力は「グローバルコンフィグレーションモード」から。
SWX2300 (config)# clock timezone JST SWX2300 (config)# ntpdate server name ntp.nict.jp SWX2300 (config)# ntpdate interval 1
設定内容の確認は、「非特権EXECモード」か「特権EXECモード」で「show ntpdate」。
SWX2300#show ntpdate NTP Server : ntp.nict.jp adjust time : Wed Dec 14 02:11:14 2022 + interval 1 hour
・DNS サーバーリストの設定
DNS への問い合わせ機能を有効にし、DNSサーバーリストに RTX830(192.168.100.1)を設定して
おきます。コマンドの入力は「グローバルコンフィグレーションモード」から。デフォルトゲート
ウェイも RTX830 にして静的経路も設定しておきます。
SWX2300 (config)# ip domain-lookup SWX2300 (config)# ip name-server 192.168.100.1 SWX2300 (config)# ip route 0.0.0.0/0 192.168.100.1
” ping 8.8.8.8 ” や ” ping google.com ” で外に出れるようになりました。静的経路の設定をしておかな
いと SWX2300 から NTPサーバーにアクセスして時刻を取得する事も出来ません。DNSサーバーは最
大 3件まで登録可能です。リストの表示は「show ip name-server」で。
・IPアドレスの設定
IPアドレスは固定しておくと管理が楽になります。VLANインターフェースに対して IPアドレスとネ
ットマスクを設定します。コマンドの入力は「グローバルコンフィグレーションモード」から。
SWX2300 (config)# interface vlan0.1 SWX2300 (config-if)# ip address 192.168.100.3/24
設定の確認は「show ip interface [interface] brief」コマンドで。
SWX2300#show ip interface brief Interface IP-Address Status Protocol vlan0.1 192.168.100.3/24 up up
・LAN / SFP ポート制御
LAN / SFP ポートには説明文を設定しておくことができます。設定は「インターフェースモード」で。
今回は LANポート 1 に RTX830 に繋がっている旨を記述してみました。
SWX2300 (config)# interface ge1 SWX2300 (config-if)# description Connected to RTX830-router
「Shutdown」を設定したポートは、ケーブルを接続してもリンクアップしないようになります。初期
状態では全てのポートに「no shutdown」が設定されていて、どのポートでも使えるようになってい
るのですが、使用していないポートに「Shutdown」を設定しておけば職場などで勝手に LANケーブ
ルを差されたりする事故が減るかも?例えば 16番ポートを使用不可にする場合は以下の通り。
SWX2300 (config)# interface ge16 SWX2300 (config-if)# shutdown
パスワードについては特に設定せずこのまま使う事にします。設定する場合はコマンドリファレンスを参照下さい。省電力機能(EEE:Energy Efficient Ethernet)、ポートミラーリング、リンクアグリゲーション、VLAN などについても当面使う予定は無いので、今後使う事があれば追記します。
■ 状態確認コマンドあれこれ
機器の状態を確認したりするコマンドについてもメモしておきます。
・稼働情報の表示
「show environment」:システムの稼働情報を表示するコマンド。
SWX2300# show environment
SWX2300-16G BootROM Ver.1.00
SWX2300-16G Rev.2.00.17 (Mon Jul 6 11:48:18 2020)
main=SWX2300-16G ver=00 serial=********* MAC-Address=****.****.****
CPU: 0%(5sec) 1%(1min) 1%(5min) Memory: 37% used
Configuration file: config0
Serial Baudrate: 9600
Boot time: 2023/02/22 16:05:16 +09:00
Current time: 2023/02/24 00:05:29 +09:00
Elapsed time from boot: 1days 07:57:08
・起動情報の表示
「show boot」:起動情報を表示するコマンド。(非特権 / 特権 EXECモード)
SWX2300# show boot
Running EXEC: SWX2300 Rev.2.00.17 (Mon Jul 6 10:51:31 2020)
Previous EXEC: SWX2300 Rev.2.00.17 (Mon Jul 6 10:51:31 2020)
Restart by reload command
起動情報のクリアは、特権EXECモードから「clear boot list」
・バージョン情報の表示
「show version」:システムのバージョン表示。(非特権 / 特権 EXECモード)
SWX2300# show version
SWX2300-16G BootROM Ver.1.00
SWX2300-16G Rev.2.00.17 (Mon Jul 6 11:48:18 2020)
System serial number: *********
Base ethernet MAC Address: ****.****.****
・製品情報の表示
「show inventory」:本体及び SFPモジュールの製品情報表示。(非特権 / 特権 EXECモード)
SWX2300# show inventory
NAME: L2 switch
DESCR: SWX2300-16G
Vendor: Yamaha
PID: SWX2300-16G
VID: 0000
SN: *********
・インターフェース状態表示
「show interface」:インターフェースの状態表示。(非特権 / 特権 EXECモード)
SWX2300# show interface
Interface ge1
Link is UP
Hardware is Ethernet
HW addr: ****.****.****
Description: Connected to RTX830-router
ifIndex 1, MRU 1522
Speed-Duplex: auto(configured), 1000-full(current)
Auto MDI/MDIX: on
Interface counter:
input packets : 11977274
bytes : 13362074720
multicast packets: 91510
output packets : 5959444
bytes : 1383989457
multicast packets: 305798
broadcast packets: 256912
drop packets : 0
Interface ge2
・
(略)
・
Interface vlan0.1
Hardware is VLAN
ifIndex 5001, MRU 1522, ARP ageing timeout 1200
IPv4 address 192.168.100.3/24 broadcast 192.168.100.255
「show interface」コマンドの後に「ge1」などのインターフェース名を指定すれば個別のポートの
みの状態を表示させることが可能。省略時は全てのインターフェースの状態を表示。
・VLAN 情報の表示
「show vlan brief」:全ての VLAN 情報を表示。(非特権 / 特権 EXECモード)
SWX2300# show vlan brief
(u)-Untagged, (t)-Tagged
VLAN ID Name State Member ports
======= ================================ ======= ======================
1 default ACTIVE ge1(u) ge2(u) ge3(u)
ge4(u) ge5(u) ge6(u)
ge7(u) ge8(u) ge9(u)
ge10(u) ge11(u)
ge12(u) ge13(u)
ge14(u) ge15(u)
ge16(u) ge17(u)
ge18(u)
個別の VLAN ID の情報を表示させることも可能。
・ループ検出機能の状態表示
「show loop-detect」:ループ検出機能の設定や状態を表示。(非特権 / 特権 EXECモード)
SWX2300# show loop-detect
loop-detect: Disable
port loop-detect port-blocking status
-------------------------------------------------------
ge1 enable enable ------
ge2 enable enable ------
ge3 enable enable ------
ge4 enable enable ------
ge5 enable enable ------
ge6 enable enable ------
ge7 enable enable ------
ge8 enable enable ------
ge9 enable enable ------
ge10 enable enable ------
ge11 enable enable ------
ge12 enable enable ------
ge13 enable enable ------
ge14 enable enable ------
ge15 enable enable ------
ge16 enable enable ------
ge17 enable enable ------
ge18 enable enable ------
-------------------------------------------------------
(*): Indicates that the feature is enabled.
取りあえずはこんなところで。何か変かがあれば追記することにします。