手持ちの音楽CD はほとんど全てを iTunes の「ALAC(Apple Lossless Audio Codec)」形式でリッピングして NAS に放り込みました。「ALAC」は可逆圧縮方式のオーディオコーデックで、音質を劣化させること無く圧縮・復号することができるとされています。「FLAC(Free Lossless Audio Codec)」も同じ可逆圧縮方式のオーディオコーデックで、どちらも現在では広く使われていますが、CD音源のリッピングに限った話では元の音源が 44.1kHz・16bit でしかないので好みで選んで構わないと思います(ただし iTunes は今の所 FLAC形式の音源の再生に対応していません)。
■ 音楽CD のリッピングを進めた理由
CD をリッピングしてデジタルデータ化しておくことは NAS などに入れておくと様々な機器から利用出来て便利という事の他にも早めにやっておくべきだと思う理由があります(バックアップは必須ですが)。
実は以前、荷物整理の一環で手持ちの CD のいくつかを中古ショップの買取に出したのですが、パッと見た感じ傷も無く再生にも何ら問題がなかった一部の CD が盤面に微小な穴が空いているとして買取不可とされてしまったのです。どうやら蒸着されたアルミ簿膜に劣化が生じて穴が空いていたようです。
CD は印刷面(ラベル面)のすぐ裏がアルミニウム簿膜の反射層になっていて、その上に記録層、ポリカーボネイト基板の樹脂層という構造になっているのですが、元々反射層がレーベル面からの傷に弱い上に寿命があるらしく、数十年が限度とされているようなのです。反射層と記録層では酸化や湿度の影響を受けて剥離や経年劣化が起こるようですし、樹脂層についてもポリカーボネイトの加水分解が進んで白濁してしまい、酷い場合には読み取り不能になってしまうということが起こるようです。この点については、今のところ読み取れない程酷くはなっているものはありませんが、手持ちの DVD の何枚かで確認しました。もちろん製造時の品質なども大きく影響するのでしょうが、寿命という話に限れば適切に取り扱われた昔のアナログレコードの方が長持ちするようです。
■ 使いやすい楽曲管理ソフトを探して
これまでずっとリッピング作業を iTunes で行っていたこともあって、惰性で PC での音楽データの管理も Apple の iTunes を利用していました。アーティスト名・曲名などは当然として、大方のアルバムジャケット画像を自動取得してくれますし、タグ編集(歌詞の追加など)も割と行いやすいのですよね。とはいえ、リッピングした ALAC形式の mp4ファイルだけでも 5,000曲・150GB 程にもなってくると iTunes ではスクロールを初めとして全体的な動作がかなり重くなってしまいます。また、購入などで徐々に増えつつある FLAC や ogg などのファイルは別の再生ソフトを使わないと聴くことができません。
SONY の「Music Center for PC」(無料)や、有料ソフトでは 14日間試用することの出来る DigiOn の「CurioSound」などを試してみた結果、両者に付いているアップサンプリング機能が意外にも古い mp3 のファイルなどでかなりの効果があることが分かったのですが、いまいち UI などが好きになれなかったのでもう少し探してみることにしました。
そんな中、目に留まったのが Tiki さんが開発を続けられている「TuneBrowser」。DSD / FLAC / ALACなどのハイレゾ音源にも対応している他、MP3 / Ogg Vorbis / AAC / WavPack / Wave / AIFF / APE / WMA と非常に幅広いフォーマットに対応しています。PCからの出力についても ASIO / WASAPI 排他モードまでしっかりサポートしてくれています。
ダウンロードは上の開発者の方の HP から直接行う以外にも「窓の杜」からも行うこと可能で、他にも Microsoft Store アプリ版がリリースされています。「Free Edition」と「 Full Edition」が用意されていて、500曲以内の管理であれば「Free Edition」で無料で使わせて頂くことができます。管理できる曲数以外の機能制限はありませんので十分に使い勝手を試すことができると思います。
これは TuneBrowser のせいではありませんが、Windows 10 のスケーリング機能を使っていない 4K 解像度のディスプレイにほぼデフォルトの状態で起動すると左の写真のように、とても表示が細かくなってしまって楽曲の選択などもしにくい状態なので、いくつか見やすくなるようにカスタマイズしていくことにしました。
まずは「ファイル」→「設定」→「表示の設定」から
・ 「ツールバー」で「大きなボタンを使う」を「Yes」に
これで再生・停止・RepeatなどのUIの操作ボタンが大きくなります
・ 「フォント」に移り、
「ウインドウの基本フォント」
フォルダツリー部分などのフォントの種類・大きさ
「ダイアログボックスの基本フォント」
曲のプロパティなどダイアログボックスを開いた時のフォントの種類・大きさ
「ビューフォントの拡大率」
再生中のアルバム曲リスト部分等のフォントの表示倍率
「1」が標準で「1.5」が最大になるようです
をそれぞれ調節して「OK」を押します。
「表示」から「テーマ」を「Rusty」に設定し、同じく「表示」から「ドッキングウィンドウ」の「Lylics View」のチェックを入れた状態でフォントサイズを「14pt」に、ビューフォントの拡大率を「1.5」にしてみた状態が下の画像です(分かりにくければごめんなさい \(__ ) )。歌詞データを入力していれば Lylics View のところに表示されます。
初回起動時に登録する楽曲ファイルフォルダの指定を求められますが、後からいつでも追加することができます。対象となる楽曲ファイルやフォルダを「TuneBrowser」にドラッグ&ドロップするだけです。使ってみると分かると思いますが、大量の楽曲ファイルを登録しても動作は非常にキビキビしていて使いやすいですんね。作者の方が foober 2000 で不満だったところを改良する目的で作り始めたとおっしゃっている通り、かなり自由にカスタマイズすることが可能です。
■ リサンプリング機能
また、TuneBrowser には「SoX Resampler」というアップサンプリング機能が搭載されています。この機能は foobar 2000 のプラグインとしても有名らしいので知っている方も居られるかと思います。機能は「ファイル」→「設定」から「再生の設定」にある「SoX Resamplerの設定」で「リサンプル処理する」を「Yes」にすることで有効化できます。リサンプル後のサンプリングレートの指定や一定上のサンプリングレートの楽曲は変換させない(ハイレゾファイルに余計なことをしない)といった設定が行えます。全くの主観ですがはっきり分かるくらいの良い方向への変化を感じ取ることができました。少なくとも私にとっては厚みの増した心地よい音に聞こえます。
■ 試用してみて
気になった点ですが、TuneBrowser の初期設定では楽曲のダブルクリックで再生が始まるようになっていません。感覚的にもダブルクリックで再生が始まる方が自然に感じるのでここも修正してやることにします。「ファイル」→「設定」で「再生の設定」から「楽曲のダブルクリックで再生する」を「Yes」に変更してやればOKです。これはデフォルトの設定になっていても良かったのでは?
しばらく使ってみてとても気に入ったので Microsoft Store 版の方に課金させて頂きました。作者の方のHPから直接 Paypal などで支払う事も可能ですが、Microsoft Store 版の方は自動更新機能が使えるので管理が楽だと思います。Microsoft Store 版の課金は立ち上げた「TuneBrowser」上から行います。
「ヘルプ」→「バージョン情報」で表示されるダイアログボックスの「Microsoftストアで購入」ボタンから購入できます。購入時にアカウント確認として「PIN(Microsoft アカウントに設定しているものです)」を入力する必要があります。支払い手段に PayPal が使えるのは安心ですね。
尚、Microsoft Store での価格は米ドル/円の為替相場によって若干の変動があるようです。まあ価格も安いので誤差程度ですけどね。
■ OpenHome
さて、操作性や見た目の良さ以外にもこちらのソフトを使う事にした大きな理由がもう一つあります。それは TuneBrowser が「OpenHome」に対応しているということです。「OpenHome」は、ネットワークオーディオの標準となっている「DLNA」の改良版のような仕組みで、対応している機器ならばタブレットやスマートフォンから操作することができるようになります。
「OpenHome」を利用できるようにする為にまず TuneBrowser の「ファイル」→「設定」と進み、「ネットワークの設定」で「OpenHome対応を有効にする」を「Yes」に、「LAN I/F」で使用するLANポートを指定してやります。注意喚起のダイアログボックスが出ますが許可して問題ありません。
iPhone、iPadといったiOS機器では下の「Linn Kazoo」というアプリ(無料で利用できます)を使ってPCで起動している「TuneBrowser」の操作を行うことができるようになります。
LINN はスコットランドの高級オーディオ機器メーカーで英国王室御用達としても指定されており、ネットワークオーディオ界では老舗なのだそうです。DLNA を採用せず作り上げてきた独自のシステムを元に公開された「OpenHome」は国内でも TEAC などのオーディオ機器メーカーが採用するなど徐々に広まりを見せているようです。Marantz・Denon 連合も正式に採用してくれればいいんですけどね。
上が iPhone 8 で Linn Kazoo を使ってみた場合、左は iPad Pro での様子です。ただ、どちらの場合もアプリの安定性・接続性がイマイチなのですよね。繋がってしまえばかなり使い勝手がよいのですが、接続待ちの状態が続いたりアプリが落ちてしまうことがあります。一応スマホ・タブレットの Linn Kazoo を先に立ち上げておいてからPCの TuneBrowser を立ち上げるようにした方が認識させやすいようではありますが・・・。
さてこの Linn Kazoo、上でも書いていますがとにかく認識が安定しません。いつものように使おうとするとウンともスンとも言わなくなってしまう事があります。他になにか同じ様な使い方ができるものがあればいいのですけどね・・・。