従来のハードディスク(HDD)に置き換えられる形で SSD はすっかりメジャーな記憶媒体となりました。SSD も登場した頃は SATA という接続インターフェースの影響で、速い製品でも速度が 550MB/s 程度に抑えられていましたが、それでも HDD のアクセス速度の数倍にはなったので、初めて使った時は本当に驚いたものです。Windows やアプリケーションの起動速度が目に見えて速くなりましたからね。
「M.2 NVMe SSD」は、接続インターフェースに「PCI Express(以下 PCIe)」が採用されたため、データの転送速度が更に大きく引き上げられました。ちなみに「M.2」は接続端子の規格の名称、「NVMe」は通信プロトコルの名称です。PCIe を使用する都合上、当然ながら転送速度は規格の制限を受けます。PCIe の世代毎の規格上のレーン数と転送速度は以下の通り。現在は PCIe Gen6 の策定中なのだとか。
世代 | レーン数 | 転送速度(片方向) | 規格策定 | |
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PCI Express | Gen1 | x1~x32 | 250 MB/s ~ 8,000 MB/s | 2005年 |
Gen2 | x1~x32 | 500 MB/s ~ 16,000 MB/s | 2007年 | |
Gen3 | x1~x32 | 1,000 MB/s ~ 32,000 MB/s | 2010年 | |
Gen4 | x1~x64 | 2,000 MB/s ~ 128,000 MB/s | 2017年 |
但し、SSD の場合はレーン数 4本で運用されることがほとんどのようです。つまり Gen3 の M.2 SSD で 4,000 MB/s、Gen4 で 8,000 MB/s が理論上の速度上限となりますが、PCIe にはクロック信号が埋め込まれているため、8掛けの概ね 3,200 MB/s、6,400 MB/s 辺りがそれぞれの上限速度となるようです。だいたい現在販売されている製品のベンチ結果とも一致しますね。
「M.2」SSD には幅「12 / 16 / 22 / 30mm」の 4種類、長さ「16 / 26 / 30 / 38 / 42 / 60 / 80 / 110mm」の 8種類で計 32タイプが規格としては存在するのですが、現在主流になっているのは「Type 2280」という幅 22mmx長さ 80mm の製品で、他の大きさのものはほとんど見かけることは無いでしょう。
だいたいはマザーボード上の M.2スロットに取り付けることになるかと思いますが、この PCIe のレーンの数は使用している CPU の世代やマザーボードに使用されているチップセットの制約を受けるため有限です。取り付ける場所によっては他の機器(SATAポートや PCIe スロットなど)と排他使用となるケースがあるので注意が必要です。備忘録を兼ねて手持ちのマザーボードで確認してみましょう。
■ ASRock Z390 Taichi の場合(CPU:Core i7-9700K)
Z390 チップセットの場合、PCIeレーン数は CPU の持つ Gen3x16本 + チップセットの Gen3x24本の合計 40本ですが、このうち CPU側の 16本のレーンはほぼ GPU専用といっていいので、残りの 24本で他の拡張スロットや M.2 SSD などをやりくりすることになります。このため、Z390 Taichi では以下の様な制限が生じます。
・M2_1 は SATA3_0 及び SATA3_1 とレーンを共用し排他利用
・M2_3 は SATA3_4 及び SATA3_5 とレーンを共用し排他利用
また、M2_2 を使用している場合は SATA3_3 が無効になります。8ポート全ての SATAポートを使用したいのであれば M2_2 にのみ M2. NVMe の SSD を搭載すればよいようです。ただこの場所はグラボの廃熱の影響が大きそうですね・・・。
ソケットの規格としては、M2_2 と M2_3 はタイプ 2230/2242/2260/2280/22110 と一番長い規格のものも搭載可能ですが、M2_1 は PCIeスロットと干渉してしまうのでタイプ 22110 を搭載する事はできません。SSD 用のヒートシンクを使いたい場合などにも注意が必要となるでしょう。
■ ASRock B450 Steel Legend の場合(CPU:Ryzen 5 3500)
B450 チップセットの場合は廉価版という位置付けのため、チップセット側の PCIe のレーン数は 6本しかありません。Ryzen 5 3500 の方で 24本持っていますが、うち 4本はチップセットリンクとして使用され、16本は GPU との接続に使われます。残る 4本は、M.2 SSD と PCIe(x4)との排他利用となるようです。
B450 Steel Legend の場合では M2_1 が CPU側のレーンを使用するため PCIe4 と排他利用になるようですね。Gen3x4 と帯域が広いため、起動ディスクはこちらに挿すことが推奨されているようですが、スロット後ろにファンコネクタがあるため、タイプ 22110 の M.2 SSD を挿すことは出来ません。なんでこんな所にコネクタを・・・と思いますが、 まあ ASRock らしいですかね(苦笑)。
一方、M2_2 の方は SATA3_3 及び SATA3_4 とレーンを共用し、排他利用となります。こちらはタイプ 22110 も挿せますが、Gen3x2 と帯域が狭くなってしまいます。こちら側に高速な SSD を挿しても力を出し切れませんが、この辺りは廉価版ということで致し方ありませんかね。
このように組み合わせる CPU とマザーボードによって排他使用となる組合せも変わってくるので結構厄介です。購入時には充分検討したつもりでも時間が経ってからいざ取付ようとすると忘れていたりして、別の HDD が見えなくなって焦るということもわりとありがちなのですよね。