従来の iPad でもテレビやPCモニターへの画面出力は可能でした。ただ、「Lightning - Digital AVアダプタ」のようなた変換器を購入するか、「AirPlay」を利用して Apple TV などに飛ばす必要がありました。
11月に発売された第3世代となる iPad Pro では Lightning から USB Type-C へコネクタが変更されたのに伴って様々な機器を繋ぐだけで使用することができるようになりました。そこで今回は第3世代 iPad Pro 11inch を EIZO の「FlexScan EV2785」に接続して画面出力機能を試してみることにします。(EV2785 については下の記事で簡単にレビューしてますので併せてご覧頂ければ幸いです。)
iPad Pro から EV2785 への映像出力は「DisplayPort over USB Type-C(DP Alt Mode)」という規格を利用して行われ、USB Type-C のケーブル1本でモニターに画面出力させつつ「USB Power Delivery」による iPad Pro への給電も行うことができます。配線をごちゃつかせること無くスマートに繋ぐことができるのはいいですね。第3世代 iPad Pro の USB Type-C ポートを使った充電と接続に関しては下記リンクの情報もご参照下さい。
EV2785 の USB Type-C ポートは背面下部にあります。残念ながら EV2785 には USB Type-C のアップストリームポートが 1つしかないので、PC など複数の機器と接続するには都度つなぎ替えるか切替機などを併用する必要があります。(今現在 Type-C 対応の切替機が発売されているかどうかは不明です。)当然ですが EV2785 側面の 2つの USBダウンストリームポートは USBハブとして機能します。試しにキーボードを繋いでみたところ正常に使用できました。
ここで気づいたのですが、どうやら iPad Pro 2018 モデルに付属している USB Type-C ケーブルは映像信号の伝送には対応していないようです。恐らく帯域幅が足りてないのでしょう。iPad Pro 付属のケーブルを繋いでみても EV2785 の給電機能を使った高速充電は出来ましたが外部ディスプレイとしては認識してくれず、しばらく悩みました。ひょっとしてケーブルが原因かもと考えて EV2785 付属の USB Type-C ケーブルにつなぎ替えてみたところ無事映りましたので、やはりケーブルの問題なのだろうと思います。EIZO の USB-Cケーブルは「CC200SS」という型番のようですが今のところディスプレイに付属するのみで一般販売はされてないようです。市販されているものでは Anker のこのあたりのものや Belkin のこのあたりのものが使えるようです。ケーブルの値段が高いのには理由があるということのようですね。
接続すると iPad Pro のバッテリーアイコンの左側に青いコネクタのアイコンが表示されました。(このアイコンはしばらくすると消灯します。)コントロールセンター上では「Dockコネクタ」として認識されていました。第3世代 iPad Pro は最大 5K での映像出力と HDR10 規格にも対応しているとの事ですが、残念ながら EV2785 では仕様上 4K SDRモードまでの表示となります。接続するとすぐに iPad Pro の充電も始まるのですが、これが本当に早い!これが USB-PD か!とちょっと感動してしまいました。
EV2785 と接続して 4K での映像出力をテストしていたのですが、ここでも 1つ気付いたことが。EV2785 にはスタンバイ状態から一番左と電源のタッチセンサー同時押しで入ることの出来る「Administrator Sttings」という裏メニュー(?)があるのですが、4K/60Hz で iPad Pro の画面出力させるにはこのメニュー上でディプレイの USB Type-C ポートの動作モードを「USB2.0」に切り替えてやる必要があるようです。「USB3.1」として動作させた場合は iPad Pro からの出力が WQHD(2560x1440ドット)となってしまいました。後で分かったことですが、どうやら信号線の規格上の問題のようですね。
iPad Pro からの映像出力は基本的に「ミラーリング」となり、「セカンドスクリーン」に対応したアプリでのみ iPad と ディスプレイに別々の映像が出力されるようになるそうです。Amazon Prime Video や iTunes の映画では EV2785 にフルスクリーン・黒帯無し(上下の黒帯は出るものもあります)で映像が出力され、iPad Pro の方には静止画像の上に一時停止やスキップなどのリモコン的な操作画面が表示されました。「infuse 5」という動画プレイヤーアプリもセカンドスクリーンに対応しているようです。
ホーム画面や解像度が対応していないアプリでは下の右側写真のように左右に大きな黒帯が出現します。Youtube や Abema TV、ゲームアプリではこのような表示になってしまいました。逆光でやや見づらい写真になってしまっているのはご容赦ください。
面白いと思ったのは Amazon Prime Video や iTunes での映画を再生している時に音声だけ AirPlay2 で別の機器に飛ばすことが出来る点。USB-C で iPad とディスプレイを接続すると普通なら iPad のスピーカーからは音声が出なくなり、代わりにディスプレイの方から音が出るようになりますが、テレビならまだしも PC用ディスプレイのスピーカーなんてとりあえず鳴るというだけで酷い音質のものがほとんどです。そこで iPad のコントロールセンターから音声だけを AirPlay2 で Marantz の NR1608 に飛ばしてみたところ、特に映像と音声のずれを感じるようなことも無く良好な音質で普通に楽しむことができました。映像配信を楽しみたいのであれば素直に Apple TV や Fire TV を買う事をお勧めしますが、そうした STB機器を持っていない・わざわざ買いたくはないという場合にはこうした使い方もありなのかも知れません。
iPad Pro の映像を PCモニターに出力するという使い方の他にも「Duet Diplay」や「Luna Display」などを使って iPad Pro を Macなどのサブディスプレイとして使用することもできるようですし、やはり USB Type-C に変更されたメリットは大きそうですね。新型 Mac mini とこの iPad Pro の組み合わせで高性能な超省スペースPC の実現なんてことも出来てしまいますし。