こちらの記事は「楽天モバイル 無料サポータープログラム」参加時の記事です。現在の仕様とは異なる部分がある事をご留意の上お読み下さいますようお願い申し上げます。最新の情報は必ず 楽天モバイル のサイト で確認して頂きますようお願い申し上げます。
7月にリリースされた iOS版の「楽天Link」については以下の記事で動作確認とレビューを行っていますので、よろしければ併せてご覧下さい。
1月末から参加している「楽天モバイル 無料サポータープログラム」ですが、プログラム参加条件のひとつに「楽天Link を使うこと」というものがあります。そこで、「楽天Link」とは一体どのようなもので何ができるのかということについて実際に使ってみた感想など書いてみようと思います。
■ 「楽天Link」とは?
そもそも「楽天Link」とはなんぞや?という話ですが、楽天によると「楽天Link」は「電話・メッセージ・SMSがひとつになった便利なダイヤルアプリ」とのこと。楽天としては基地局の不足と、楽天モバイルに割り当てられた電波の性質から室内などで電話が繋がりにくくなることを回避する為の手段のひとつとしてこの機能を用意したようです。
現状、楽天モバイルに割り当てられている「1.7GHz帯」という周波数帯は、他の携帯御三家が持つ、所謂「プラチナバンド」と呼ばれる 800MHz帯に比べて障害物の影響を受けやすく、山間部や多くのビルが立ち並ぶ地域ではどうしても電波の入りが悪くなってしまいます。仕組みについては後ほど改めて考察してみますが、「楽天Link」を用意することでこうした「つながりにくい」という問題を補おうという事のようですね。
アプリの初期設定方法と使い方については下記リンクを参照ください。
2020年2月の時点ではまだ「ベータ版」ですが、この「楽天Link」アプリを使う事により、
・ 国内通話、国際通話
・ 国内SMS、国際SMS
・ メッセージ、グループチャット(利用者同士が楽天Link を使う場合)
・ 連絡先の登録・管理
を行うことが可能です。利用者側の「楽天Link」を利用する最大のメリットは Wi-Fi 経由での発信を行うことで通話料無料で電話が出来るということです。(厳密にはパケット料金が生じる場合もあります。)但し、利用する上での制限や注意点もありますので、順を追って見ていきたいと思います。
■ 「楽天Link」の仕組みはどうなっているのか
非常に大雑把に言ってしまうと、「楽天Link」は IP電話の一種なんだろうと思います。ただし、楽天モバイルの「SIMによる認証」が入るという点で一般的な IP電話とは異なります。また、初回起動時には「楽天モバイル回線のSMS」による認証が必要です。ここからの説明には私の「想像」も多分に入っているのでその点は留意してお読み下さい。
IP電話は、「VoIP(Voice over Internet Protocol)」という技術を用いてインターネット上で電話サービスを利用できるようにするもので、NTTの提供している「ひかり電話」もこのひとつになります。「ひかり電話」は、NTTがメタル回線から移行しやすいように工夫しているので通常の市外局番付き電話番号が使えますが、そのほかに「050」から始まる番号の IP電話サービスもいくつかの事業者から提供されています。(尤もこちらは海外からの特殊詐欺などに使われてイメージがかなり悪くなってしまいました。)
スマホなどの携帯電話では通常、SIMカードを用いてそれぞれの事業者専用の無線電話回線を使って電話を掛けますが、無線基地局の整備に多額の投資を必要とするため、新規事業者の参入は非常に難しいものとなっています。(それでも新たに光ファイバーなどを敷設するよりは遥かに安上がりなので、これが中国やアフリカで一足飛びに携帯電話網が急激に普及した要因でもありますが。)
そこで、投資額を抑えつつ携帯電話網を拡大し易くするために、家庭や職場の Wi-Fi を使って IP電話や SMS を使えるようにする仕組みとして「Wi-Fi Calling」という仕組みが米国で考え出されました。この技術を使えば基地局の整備が行き届いておらず、圏外となってしまうような場所でも携帯電話を使えるようになります。実際に米国では T-Mobile US や Sprint などがこのサービスを提供しているそうです。
「Wi-Fi Calling」は、インターネット上で電話を使うことのできるサービスである点に関しては IP電話と変わりませんが、携帯電話の SIMカードにある情報を使って各事業者毎で認証し、携帯電話会社内のシステムに繋ぐことが出来るという点で IP電話との違いがあるのだそうです。「Wi-Fi Calling」はこのように携帯電話の通話料金を格安に抑えることのできる可能性を持った画期的な技術なのですが、残念ながら日本でこれまでに採用した企業はありませんでした。
よく似てはいるのですが、「楽天Link」が準拠しているのは「RCS(Rich Communication Service)」という技術なのだそうです。楽天は、2014年にこれに似た技術を持っていたキプロスの「Viber」という企業を買収しています。(こちらは SIM による認証はしていなかったようですが。)また、IP電話サービスも扱う「フュージョン・コミュニケーションズ」も 2007年以降傘下に抱えています。「楽天Link」はこれらの買収した企業群が持っていた技術を元に改良したものなのではないかと思います。(この辺はあくまでも私の勝手な想像です。💦)
「楽天Link」が準拠している「RCS」という技術自体は既に携帯電話御三家が提供している「+メッセージ」という SMS でも使われていて、音声通話の機能も追加しようと思えば出来たらしいのですが、通話料金の減収へダイレクトに影響してきそうな技術だけに日本では提供されて来なかったのかも知れませんね。電話機能まで使えるようになるのは楽天モバイルが日本初となりますが、こちらに関しては新規参入でしがらみの無い楽天だからこそできたと言えるのではないでしょうか。
ちなみに「楽天Link」からは「楽天Link」利用者同士の通話以外に他社の携帯電話や固定電話などにも電話を掛けることができます。ただし、緊急電話(110番など)への通話時は自動的に通常のダイヤラー(楽天電話回線)に切り替えて発信することになるそうです。
■ 制限事項
「楽天Link」を利用する上でいくつかの制限事項が存在するのでちょっとチェックしてみます。
・ 楽天モバイル(MNO)の回線が必要
「楽天Link」を利用する為には「MNO」の方の楽天モバイル回線が必須です。「MVNO」の
回線(ドコモ、au)を使用している楽天モバイルでは利用することができません。現状、無料
サポータープログラムの参加者のみが利用することができます。
・ 今のところ Android 端末でしか利用できない
そもそも現状で iPhone では楽天モバイル(MNO)の SIM自体がまともに使えませんが、iOS 8
を搭載した iPhone 5c 以降の機種には Wi-Fi Calling の機能自体は用意されていて、実際米国で
は既に利用されているそうです。今後 iPhoneでも楽天モバイル(MNO)の回線が使えるよう
になれば利用できるようになるかも知れません。大いに期待したいところです。
・ 「遅延」が生じる可能性
仕組み上若干の遅延があるようです。試しにテレビの音声を流しているスピーカーにスマホを
近付けて別のスマホで聞いてみたところ 0.5秒くらいは遅れて聞こえて来るようでした。とは
いえ、普通に電話で会話している分にはそれ程気になることは無いかと思います。
・ 緊急電話の発信は不可
Wi-Fi 経由での緊急電話の発信はできません。自動的に標準ダイヤラーに切り替わって楽天モ
バイルの回線からの発信になるそうです。
また、アプリをアンインストールする際は先にログアウトしてからアンインストールしないと、着信またはメッセージの利用が出来なくなる可能性があるそうなので注意が必要です。
■ 現在確認している問題点
・SMS 認証コードの受信が出来ない場合がある
QRコードを使うキャッシュレスの設定をする際にSMSでの「認証コード」が届かないケース
が発生しています。実際に試してみたところ、「PayPay」と「メルカリ」の認証コードは無
事届きましたが、「au Pay」のものが受け取れず、登録が完了できない状態になっています。
この件については「my楽天モバイル」から問い合わせてみましたが、「調査中」で今のとこ
ろ解決の目処は立っていないとの回答でした。ちょっとこれは致命的ですね。
・発信者番号通知が出来ない
IP電話からでも他社 SIM を使っている iPhone に電話を掛けた場合に発信者番号通知は可能な
ので仕組み上できないわけではないと思うのですが、「楽天Link」からWi-Fi経由で電話を掛け
た場合、着信側に発信者の番号が通知されず「非通知設定」として着信します。逆に他社 SIM
を使っているスマホや固定電話から「楽天Link」への着信時は電話番号が通知されてきます。
電話を使った特殊詐欺が増えているこのご時世に非通知でしか電話が掛けれないというのもあ
り得ない話だと思うので、この点についてはアンケート毎に繰り返し訴えていくつもりです。
・「+メッセージ」との互換性がない
「楽天Link」と同じく「RCS(Rich Communication Service)」に準拠している大手3社の
「+メッセージ」との相互接続については現状白紙状態なのだそうです。つまり SMS 上で
他社の回線を使っているスマホとやり取りすることはできません。
・「my 楽天モバイル」の利用状況に「楽天Link」の通話内訳が載ったり載らなかったりする
こちらについては問い合わせた結果、4月頃までの改修を予定しているとのことでした。
「楽天Link」を実際に使用する場合の注意点ですが、楽天モバイルの回線と Wi-Fi が両方繋がっている場合、普通に電話を掛けた場合は標準ダイヤラーにフックされてしまい、楽天モバイル回線での電話が優先されてしまいます。
意図的に Wi-Fi 経由での発信をしたい場合は、機内モードに切り替えた上で Wi-Fi のみを有効にした状態で電話を掛ける必要があります。「機内モード」では通常の携帯電話回線経由では発着信できませんので、ここで Wi-Fi 経由での通話が出来ているかどうかの判断が可能です。また、発信者番号が非通知となってしまうことからも判断出来るでしょう。
自分の家や職場の Wi-Fi 環境で利用する場合は気にする事はないと思いますが、空港やカフェなどの「公衆Wi-Fi」で利用する場合は一応あまり変なところに繋がないよう注意した方がいいでしょう。可能であれば「1.1.1.1」などの VPN サービスは通した方が安全だと思います。
VPN 使用時にもし発信出来ない場合は一度 Wi-Fi を On・Off してみてください。
実際に「楽天Link」を使ってみてまだまだ致命的な問題が残っていることは事実ですが、通話料金を下げることができそうですし、消費者にとっては非常にありがたいサービスになりそうだと思いました。「楽天Link」からの通話を Wi-Fi 経由にするのか楽天の回線経由にするのかスイッチみたいなもので簡単に切り替え出来るようになってくれればいいのですけどね。
2月13日の決算会見の席で三木谷社長が楽天モバイル(MNO)の正式サービス開始時の料金体系については 3月3日に発表すると明かしたそうです。(本来は新型コロナウイルスのせいで中止になった「MWCバルセロナ2020」というイベントで発表する予定だったそうです。)正式サービスの開始予定日についても今のところ 4月1日からという線が強い模様です。どんなプランが発表されるか非常に興味深いので楽しみに待ちたいと思います。
楽天Link からの発信が通常回線、Wi-Fi通話共に発信出来なくなることがありました。着信の方もできるにはできたのですが電話を掛けてから数十秒してからやっと電話が鳴るという状況で、普通は電話が通じないと思って切ってしまうレベルでした。Wi-Fiルーターの再起動、スマホ端末の再起動などをしてもダメでしたが、「楽天Link」アプリから一旦ログアウトし、再ログインすることでようやく元通り通話ができるようになりました。解決策の一つになるかも知れないのでこちらにも書き残しておきます。何か調整しているのかも知れませんが、ちょっと3月に入ってから「my楽天モバイル」アプリ共々不安定になっているようなのが気になる所です。
(2020.3.16)
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