昨年の 10月末に SIGMA から「10-18mm F2.8 DC DN」という APS-C ミラーレス一眼カメラ用の非常にコンパクトな超広角ズームレンズが発売されました。F2.8 という開放 F値を維持しながら僅か 255g しかないというのですから驚きです。SIGMA の公式 YouTube チャンネルで行われた発表会を私も観ていたのですが、やはりそのサイズの小ささに驚いている方が多かったですね。
また、今回発売された「10-18mm F2.8 DC DN」では、「プッシュオン式」というこれまでにない脱着方法を持つレンズフードが採用されていたことにも目を引かれました。
SONY の α6700 と合わせて使う超広角ズームレンズとしては、既に TAMRON の「11-20mm F/2.8 Di III-A RXD (Model B060)」を持っていました。こちらのレンズも充分にコンパクトで写りも良く、非常に満足して使っている 1本だったのですが、「広角の 1mm」はとても差が大きいと聞くこと、SIGMA の製品にはずっと以前から興味を持っていたことなどから買い換えを決意しました。
今回購入したのは SONY Eマウントのモデル。これら SIGMA と TAMRON の 2つのレンズについては気になっている方も多いのでは無いかと思いますので、比較しながらレビューしてみようと思います。所詮素人目線での記事でしかありませんが、購入を検討している方の参考に少しでもして頂ければ幸いです。
■ 同等の画角を持つレンズの仕様を比較してみる
ソニー Eマウントの APS-C ミラーレス一眼カメラ用の超広角ズームレンズは、わりと選択肢が豊富です。そこでまずは SIGMA の「10-18mm F2.8 DC DN」、TAMRON の「11-20mm F/2.8 Di III-A RXD (Model B060)」、SONY の「PZ 10-20mm F4 G(SEL1020G)」の 3本のスペックを見比べてみたいと思います。
これらのほか、ケンコー・トキナーからも「atx-m 11-18mm F2.8 E」という超広角ズームレンズが発売されています。少々逆光耐性が弱いとは聞きますが、「トキナーブルー」と呼ばれる青の発色の良さがポイントらしいので、機会があれば是非使ってみたい 1本ですね。
レンズ名称 | SIGMA 10-18mm F2.8 |
TAMRON 11-20mm F2.8 |
SONY PZ 10-20 F4 G |
---|---|---|---|
直販価格(税込) | 104,500 円 | 88,000 円 | 99,000 円 |
焦点距離 (35mm判換算値) |
10 ~ 18 mm (15 ~ 27 mm 相当) |
11 ~ 20 mm (16.5 ~ 30 mm 相当) |
10 ~ 20 mm (15 ~ 30 mm 相当) |
開放絞り | F 2.8(ズーム全域) | F 2.8(ズーム全域) | F 4(ズーム全域) |
レンズ構成 | 10群 13枚 | 10群 12枚 | 8群 11枚 |
絞り羽根 | 7 枚(円形絞り) | 7 枚(円形絞り) | 7 枚(円形絞り) |
AF 駆動方式 | ステッピングモーター | ステッピングモーター | リニアモーター |
最短撮影距離 | 広角端:11.6 cm 望遠端:19.1 cm |
広角端:15 cm 望遠端:24 cm |
AF時 20 cm |
最大撮影倍率 | 広角端 1 : 4(約 0.25 倍) 望遠端 1 : 6.9(約 0.14 倍) |
広角端 1 : 4(約 0.25 倍) 望遠端 1 : 7.6(約 0.13 倍) |
AF時 1 : 6.9(約 0.14 倍) |
画角 | 109.7 ° ~ 76.5 ° | 105.2 ° ~ 71.35 ° | 109 ° ~ 70 ° |
手ブレ補正機構 | 無し | 無し | 無し |
フィルター径 | Φ 67 mm | Φ 67 mm | Φ 62 mm |
防塵防滴性能 | 簡易防塵防滴 | 簡易防滴 | 防塵防滴 |
最大径x長さ | Φ 72.2x 64.0 mm | Φ 73.0x 86.2 mm | Φ 69.8x 55.0 mm |
質量 | 255 g | 335 g | 178 g |
付属品 | プッシュオン式花形フード フロント・リアキャップ |
バヨネット式花形フード フロント・リアキャップ |
バヨネット式花形フード フロント・リアキャップ |
SONY には、「E 10-18mm F4 OSS(SEL1018)」というレンズもありますが、こちらは既に生産完了となっているため、「PZ 10-20mm F4 G(SEL1020G)」の方を比較対象とさせて頂きました。尤も、こちらのレンズは「パワーズーム(電動ズーム)」対応レンズということで、どちらかというと動画撮影をメインターゲットにしているようですね。最新のリニアモーターを搭載していますし、F4 という開放F値を許容できるのであれば静止画撮影にも小型軽量の非常に魅力的なレンズだと思います。。
TAMRON の「11-20mm F/2.8 Di III-A RXD (Model B060)」については以下の記事でより詳しくレビューしておりますので、併せてお読み頂ければ幸いです。
SIGMA 「10-18mm F2.8 DC DN」はレンズ内手ブレ補正機構を搭載していません。手ブレが発生するシャッタースピードの目安は一般的に「1 / 焦点距離」秒以上と言われているそうなので、広角レンズで撮影する場合はそれ程手ブレ補正機能の有無は問題にならないとは思いますが、ボディ内手ブレ補正機構を搭載している α6700 などと組合せればより撮影が捗ることは間違い無いでしょう。ズーム全域で開放F値 2.8 を実現しているため、ボケ味を生かした撮影も楽しむことが出来ます。
画像:SIGMA
クラス世界最小最軽量という触れ込みですが、加工に高い技術を要する非球面レンズや、原材料費や加工費が掛かるものの蛍石と同等の性能を持つという FLD(”F" Low Dispersion)/ SLD(Special Low Dispersion)ガラス(特殊低分散ガラス)を複数枚用いて高い画質を実現しているとのこと。
更にワイド端では 11.6cm まで被写体に寄って撮影することが可能で、F2.8 のボケ味を生かしたワイドマクロ的な撮影を楽しむことも出来ます。AF駆動はステッピングモーターですが、レンズ自体が非常にコンパクトですし、合焦速度が気になることは無いでしょう。
■ SIGMA 「10-18mm F2.8 DC DN」レンズ外観チェック!
それでは SIGMA の超広角ズームレンズ「10-18mm F2.8 DC DN」をチェックしてみましょう。
付属品は、レンズ本体と専用フードのほかは取扱説明書と保証関係の書類だけでした。SIGMA は SDGs の意識が高い企業ということもあってか、レンズとフードを入れているビニール袋以外は全て紙素材で作られたパッケージになっています。ビルドクォリティも良好で、手に持った時に価格に見合った満足感を得られるかと。もちろん福島県の会津工場で生産された ” Made in Japan ” なレンズです。
さて、SIGMA「10-18mm F2.8 DC DN」のウリの機能の 1つ、レンズフードの脱着方法です。カメラレンズの多くでは「バヨネット方式」という、レンズ先端外周の溝にフード内側に設けられた爪を少し捻ってロックする方式のレンズフードが使われているのですが、今回の SIGMA のレンズでは「プッシュオン式」という、ちょっと変わった方式のレンズフードが用いられています。
取付は簡単!「プッシュオン式」というだけに、レンズとフードに印字された「ー」マークを合わせて軽く押し込むだけでカチッと音がしてレンズフードを取り付ける事が可能です。取り外す際もフードを軽く時計方向に捻るだけ!
ひっくり返して収納する場合は、レンズ先端の「ー」マークとフード側の「▼」マークを合わせて軽く押し込むだけ。こちらも取外し方法は同じです。今までに見ないレンズフードの脱着方法だけに最初のうちはちょっと戸惑うかも知れませんが、慣れてしまえば本当に簡単です。
耐久性はどうなんだろうと気になる所ですが、「バヨネット方式」のフードでも 壊れる時は壊れる ので、あまり気にする必要はないのかなと。当然 SIGMA もそんな簡単に壊れるようなものは採用しないでしょう。今後はこの方式のものが SIGMAレンズで増えてくるのかも知れません。面白いですよ、コレ。
SIGMA の「10-18mm F2.8 DC DN」と TAMRON の「11-20mm F/2.8 Di III-A RXD (Model B060)」を比較してみます。横に並べただけでこれくらいのサイズ感の違いがあるのが分かります。TAMRON の方も充分コンパクトだと思って使ってきましたが、こうして並べてみると差は歴然ですね。
続いて重量を比べてみました。どちらもレンズフードと前後のキャップ込みの重さです。約 100g の差があるとやはり持った瞬間に違いを感じますね。
どちらもテレ端では最短に、ワイド端で最長にズーム使用時の胴長が変化しますが、SIGMA と TAMRON ではズームリングの稼働する方向が逆になっています。どうやら TAMRON の方向にズームリングが動くのが一般的で、SIGMA はイレギュラーな存在のようですね。私はこの点についてはさほど気になりませんが、気になる人は気になるだろうと思います。
レンズプロテクターも付けておくことにします。最短撮影可能距離の短いレンズは特に撮影に夢中になっていてうっかり花粉がレンズに・・・なんてことも充分あり得る話ですからね・・・。
SIGMA「10-18mm F2.8 DC DN」のフィルター径は 67mm です。最初はハクバの「XC-PRO」というプロテクターを付けていたのですが、どうも逆光時にフレアが出やすい気がしたので今は Kenko のものに取り替えています。私的にはこちらの方が具合がいいようです。
■ SONY の APS-C ミラーレス一眼「α 6700」と組み合わせてみます
現在私が使っている SONY の APS-C ミラーレス一眼「α 6700」に取り付けて比べてみます。α 6700 については以下の記事でご紹介していますので、宜しければどうぞ。
まずは TAMRON の「11-20mm F/2.8 Di III-A RXD (Model B060)」を取り付けた様子から。
こちらでも充分にコンパクトです。テレ端で一番レンズが伸びた状態でレンズ先端から画像センサーまでが 13cm くらい。アイピースカップの先まででも 18cm 程度です。
SIGMA「10-18mm F2.8 DC DN」の場合はよりコンパクトに。こちらもテレ端でレンズ先端から画像センサーまでが 10cm 程度、アイピースカップ先端まででも 14cm 程度になっています。例えば登山に携行する、自転車に積んで写真を撮りに行くなどといった際に少しでも荷物を軽くコンパクトにしたい方などにはこれだけでもかなり魅力的に映るはず。風景写真などでは広角側に 1mm 広いということで随分撮れる写真も変わってきますしね。
■ 撮影サンプル
撮影サンプルをいくつか置いておきます。以下のサンプル写真では、「はてなフォトライフ」にアップロードする関係上、解像度のみ写真調整ソフトの「SILKYPIX DEVELOPER STUDIO PRO 11」を使って 1200x800 pix に落としていますが、その他は α6700 で撮影した RAWデータをそのまま JPEG 出力したもので、画像補正などは行っていません 。
まずは SIGMA「10-18mm F2.8 DC DN」と TAMRON「11-20mm F/2.8 Di III-A RXD (Model B060)」の逆光耐性と光条の出具合を画角の違いと共にチェックしてみます。
どちらも左が SIGMA ですが、やはりやや SIGMA の方が有利でしょうか。下の写真では TAMRON の方に中央左に紫色のゴーストが出ているのが分かるかと思います。SIGMA も全くフレア・ゴーストが出ないというわけではありませんが、それでもかなり逆光時の耐性は強いように感じました。
こちらは両者のテレ端での画角の違いを比べてみたもの。APS-C の 20mm ってフルサイズ換算 30mm 相当になるので結構使いやすい画角なのですよね。TAMRON もやはり捨てがたい・・・。
以下は SIGMA「10-18mm F2.8 DC DN」の撮影サンプルです。
飲食店などあまり下がって撮影出来ない場面では広角レンズの本領発揮。
F2.8 の開放F値を持つので条件次第で夜景の手持ち撮影も可能です。
TAMRON「11-20mm F/2.8 Di III-A RXD (Model B060)」とはやはり甲乙付けがたい感じです。手放してしまうのは非常に惜しかったのですが、同じような画角のズームレンズを 2本持ち続ける余裕は無いのでドナドナして今回の購入費用に充当することにしました。
SIGMA 「10-18mm F2.8 DC DN」はズームリングの指掛かりとトルク感が非常に心地よく、撮影していて非常に楽しいレンズです。DMF などでフォーカスリングを使用する際も適度な重さを感じることが出来るので、ピント合わせがし易くていいですね。標準ズームにもう 1本持っていこうと言う時にこの軽さとコンパクトさは大いに重宝することでしょう。このレンズ 1本をカメラに付けてブラブラと街歩きをするのも楽しいと思いますよ。