当ブログでも SOUNDPEATS さんの製品はこれまでにいくつか使って来ましたが、ヘッドホンをご紹介するのは初めてとなります。そして、有線接続では無く、Bluetooth で音源と接続するヘッドホンというのも使うのは初めてのこととなります。
TWS のイヤホンはこれまでにいくつも使ってきたため、無線である事の便利さはよく分かっているつもりですが、既に有線接続のヘッドホンを持っていましたし、そもそも私の場合は屋外でヘッドホンを使うという事がまず無いので、無線のヘッドホンを買おうというところまでには到りませんでした。
とは言え、Bluetooth接続のヘッドホンに興味があったこと自体は確か。いつかは試してみたいなと思っていたところ、SOUNDPEATS の「Space」というヘッドホンを試させて頂く機会を得ましたのでこちらでレビューしておくことにします。購入をお考えの方の参考にして頂けますと幸いです。
本記事を執筆するにあたり、SOUNDPEATS 様よりレビュー用にサンプル製品の提供をして頂いて おります。公平・公正な観点から記事を執筆するよう心掛けておりますが、ご留意頂いた上でお 読み下さいますようお願い申し上げます。
■ SOUNDPEATS「Space」ワイヤレスヘッドホンの仕様を確認!
SOUNDPEATS「Space」の販売が Amazon で始まったのは昨年の 9月初旬頃のようです。実は私、こちらのブランドはイヤホン専業だと思っていたので、今回ヘッドホンの製造・販売も行っている事を知ったのはちょっとした驚きでした。調べてみると、過去に「A6」というヘッドホンも販売されていたようですね。毎度のことではありますが、まずは SOUNDPEATS「Space」のスペックから確認しておくことにしましょう。
ヘッドホンタイプ | オーバーヘッド・密閉型 |
ドライバサイズ | 40 mm ダイナミックドライバー |
再生周波数帯域 | 20 Hz ~ 20kHz |
対応コーデック | SBC、AAC |
接続方式 | Bluetooth Ver.5.3、有線 |
ノイズキャンセラ | アクティブノイズキャンセリング(ANC)搭載 |
バッテリー容量 | 1,000 mAh |
最大再生可能時間 | 約 123 時間(ノーマルモード)、約 61時間(ANC モード) |
マルチポイント接続 | 対応 |
低遅延モード | 「ゲームモード」搭載(遅延時間 65ms) |
マイク | 搭載 |
充電コネクタ | USB Type-C |
本体サイズ | 165x200x85 mm(ヘッドバンド収縮時) |
本体重量 | 約 263 g(実測値) |
付属品 | 充電用ケーブル(USB Type-A to C)、3.5mm ステレオミニプラグケーブル(1.2m) |
再生可能周波数帯域や対応コーデックが SBC と AAC に限定されていることからも分かるように、所謂 ” ハイレゾ ” 対応のヘッドホンではありませんが、アクティブノイズキャンセリング(ANC)は搭載されています。通信可能範囲は約 10m。低遅延を実現する「ゲームモード」の搭載や、マルチポイント接続への対応など、スペック面を見ただけでも価格以上の価値を見出すことの出来る製品に仕上がっていそう。
SOUNDPEATS の製品には購入日から 1年間の製造上の欠陥に対する限定保証が付いています。また、送料の負担は必要ですが、注文から 30日以内であれば理由に関わらず返品することが出来る「30日以内返金保証」も付いていますので、どうしても気に入らないようであれば support@soundpeats.com にメールで連絡を入れるか、販売元に連絡してみて下さい。
防塵・防水耐性に関する記述はありません。屋外で使う場合はそれなりに注意した方がよいでしょう。ANC をオンにしていても最大で 61時間もバッテリーが保つというのもすごいですね。
■ SOUNDPEATS「Space」の外観をチェック!
それでは SOUNDPEATS「Space」の外観や付属品のチェックから初めてみましょう。「ブラック」「ホワイト」「イエロー」のカラーバリエーションの中から「イエロー」を選んでみました。
イヤホンの「Air4 Pro」をレビューした時 にも思ったのですが、SOUNDPEATS は製品のパッケージにもかなり気を使っていますね。とても実売価格が 6000円を切ってくることがあるヘッドホンとは思えない高級感があります。価格も手頃ですし誕プレなんかにもいいかも。
付属品は製品マニュアルと充電用の USB Type-A to C ケーブル、3.5mm ミニジャックのオーディオケーブルのみとシンプル。取扱説明書は、英・独・仏・西・伊・日・中の 7カ国語に対応しています。以下から PDF でも入手する事が出来るので、ダウンロードしておくと良いでしょう。
ヘッドホンを取り出してみてビックリ。低価格帯とは思えないほどの作りの良さです。色味はイエローというよりベージュやシャンパンゴールドに近いような感じで、なかなかの気品を感じます。
イヤーカップの内側には大きく「L」「R」が書かれていますが、左右を間違えると装着時に違和感を感じると思うので、いちいち見て付けなくても大丈夫でしょう。
もちろんヘッドバンドの長さは調節可能です。いやはや、それにしてもしっかりした作りですね。
イヤーカップの根元にはヒンジが仕込まれていて、折り畳んでコンパクトにする事が可能です。せっかく折り畳めるのならなにか持ち運び用の収納袋でも付属していて欲しかったところですが、さすがにこの価格でそこまで望むのは高望みしすぎかも知れませんね(笑)。
イヤーパッドとヘッドバンドは低反発ウレタン素材をプロテインレザー(人工皮革)で包み込む構造になっているようで、装着感も非常に良好です。プロテインレザーはどうしても数年経つと加水分解によってボロボロになってくると思われますが、使用後にちょっと汗を拭いたり皮脂を拭ったりするだけでもかなり寿命は延ばせますので、面倒くさがらずに手入れしておくことをお勧めします。
今のところ交換用のイヤーパッドの販売は無いようですが、まあこの価格帯ならイヤーパッドがボロボロになってしまったら買い換え時という考え方でいいんじゃないでしょうか。何年か使っていればそれなりにバッテリーもへたってくるでしょうからね・・・。
■ SOUNDPEATS「Space」のバッテリーと充電
SOUNDPEATS「Space」には USB Type-C の充電コネクタが採用されています。ワイヤレス充電には対応していませんが、市販の充電器を使って充電することが可能です。5V=1A 以下の出力が可能な充電器を使って下さい(ほとんどの場合気にする必要はありません)。
充電中は左側イヤーカップの LEDインジケーターがオレンジ色に点灯し、充電が完了すれば消灯します。充電中は電源がオフとなり、充電しながらヘッドホンを使用するといったことは出来ません。
バッテリーが空の状態から満充電までに掛かる時間はおよそ 2時間。1回の満充電で最大 123時間連続駆動が可能です(ノーマルモード時)。ANC 機能を使用している場合でも最大約 61時間の連続再生が可能ということですので、スタミナは充分と言ってよいでしょう。
また、出掛けに充電を忘れていたことに気付いたような場合でも 10分間の充電で約 12時間再生可能な急速充電機能も持っています。さすがにイヤホンなどとはバッテリーのサイズも違うので、1日 4時間使用するとすると、約 1ヶ月間充電しなくてもバッテリーが保つようですね。
尚、長期間使用しない場合は、バッテリーの過放電による機能低下を防ぐためにも 3ヶ月に 1回程度はフル充電するようにした方が良いそうです。
■ SOUNDPEATS「Space」のペアリングと操作
SOUNDPEATS「Space」は、iOS 7 以上を搭載した iPhone / iPad / iPod touch や、Android 4.4 以上を搭載した Android OS を搭載した機器とペアリングすることが可能です。また、Bluetooth 3.1以上を使用可能な PC、DAP などともペアリング可能です。但し、ゲーム機はゲーム機側での対応が必要なのでご注意下さい(PlayStation 5 の場合は オーディオトランスミッター が必要です)。また、条件を満たしていても一部相性のようなものが生じる組合せがあるそうです。
初めて SOUNDPEATS「Space」に電源を入れた場合は自動的にペアリングモードで接続待機状態となります。早速 iPhone 13 mini とペアリングさせてみましょう。
電源を入れた SOUNDPEATS「Space」の側で iPhone を操作し、「設定」→「Bluetooth」へ進み、「その他のデバイス」に検出された SOUNDPEATS「Space」を選択してタップするだけです。接続出来たら SOUNDPEATS「Space」を選んで「デバイスタイプ」で「ヘッドホン」を指定しておくとよいでしょう。
2台目以降の機器をペアリングする場合は、ヘッドホンの右側イヤーカップにある「音量ボタン」の「➕」と「➖」を 5秒間同時に押すと「ペアリング」という音声がヘッドホンから流れてインジケーターが赤と青で点滅を始めます。この状態で接続したい機器を操作してペアリングを完了して下さい。
「マルチペアリング」に対応していない Bluetooth機器の場合、別のデバイスに切り替えようとすると一旦初期化する必要が生じますが、 SOUNDPEATS「Space」では複数のデバイスを登録しておく事が出来ますので、再生したいデバイスの側で SOUNDPEATS「Space」を選び直せば切り替わります。
次に、SOUNDPEATS「Space」の操作方法の説明に移りましょう。左右のイヤーカップにはそれぞれ下記の機能を持ったボタンが配置されています。
まずは左のイヤーカップのボタンから。左側には ANCモードの切り替えボタンしかありません。
ANCモード切替 | 押す度に「ANC ON」→「Transparency Mode」→「Normal Mode」→ ・・・ |
「Transparency Mode」は、” ヒアスルーモード ” と言った方が分かりやすいかも知れませんね。所謂 ” 外音取り込みモード ” のことです。アナウンスと共にモードが切り替わりますが、一旦音楽の再生がストップしてしまうのはちょっと残念。
続いて右側のイヤーカップです。こちらには複数の機能が割り当てられています。
電源ボタン | 電源オン | 3秒間長押し |
電源オフ | 5秒間長押し | |
再生 / 一時停止 | 短押し 1回 | |
音声アシスタント起動 | 短押し 2回で Siri / Google Assistant 起動 | |
ゲームモード | 短押し 3回で ON / OFF 切替 |
音量ボタン | 音量操作 | 「+」(上側)で音量増、「-」(下側)で音量減 |
次曲へスキップ | 「+」側 1秒間長押し | |
前曲へ戻る | 「-」側 1秒間長押し |
更に右側イヤーカップには通話中の機能も割り当てられています。
通話開始・終了 | 「電源」ボタン 1回短押し |
着信拒否 | 「電源」ボタン 1.5秒間長押し |
通話切替 | 「電源」ボタン 2回短押し |
いずれのボタンも立体的になっているので、ヘッドホンを着けたままでも手探りでボタンの位置は分かります。操作方法を覚えてしまえば困ることは無いかと。
何らかの事情で SOUNDPEATS の「Space」を完全に初期化したい場合は、電源オン・非通話の状態で右側イヤーカップの「電源」ボタンと左側イヤーカップの「ANC」ボタンを 10秒間同時押しして下さい。インジケーターライトが赤と青で 2秒間交互に点滅し、デバイスのリセットが完了します。
「マルチポイント」接続については専用アプリのインストールが必要になるので後述。
■ 専用アプリ「SOUNDPEATS」で管理
SOUNDPEATS の「Space」には、その名も「SOUNDPEATS」という SOUNDPEATS 製品専用の無料アプリが用意されています。無理にインストールしなくても基本的な操作に問題はありませんが、ファームウェアアップデートや、先程ちらっと触れた「マルチポイント」接続機能を使うのに必要です。
アプリの動作要件は、Apple版が Ver.13.0 以降の iOS または iPad OS を搭載した iPhone・iPad・iPod touch、または ” M1 ” 以降の SoC を採用し、macOS 11.0 以降を搭載した Mac。Android版は、Android 6.0 以降を搭載した Androidデバイスです。Windows版のアプリはありません。
上は Android版のアプリ画面です。基本的な操作はヘッドホンにあるボタンで行えますが、イコライザーの調整や「マルチポイント接続」のオンオフ、ファームウェアの更新などはアプリを使用する必要があります。2024年1月現在で「v47」というファームウェアが最新版のようです。
さて、「マルチポイント接続」についてですが、この機能はアプリのカスタマイズ画面下方にある「マルチポイント」という項目で ON/OFF の切替が出来るようになっています。デフォルトで ON になっていると思いますが、もし上手くいかない場合は確認してみて下さい。
「マルチポイント接続」は、例えば PC とスマホ、スマホとタブレットなど、2台のデバイスと同時にペアリングさせておき、片方で楽曲を再生している途中にもう一方から再生を始めると、自動的に最初に再生していた機器から後から再生を始めた機器に再生デバイスが切り替わるという機能です。
但し、3台目以降の機器とペアリングさせた場合は、最初に登録した機器とのペアリング情報が上書きされ、最後に接続した 2台がマルチポイント接続されるようです。再び 1台目の機器で「Space」を使いたければペアリングさせ直す必要があるようなのでご注意下さい(と言っても、1台目の機器の設定画面で「Space」を選び直すだけで、「Space」の初期化をする必要はありません)。
■ 「ゲームモード」は充分に実用的なレベル
SOUNDPEATS「Space」には「ゲームモード」という低遅延モードが搭載されています。iPad Pro に Bluetooth接続し、「ミリシタ」をプレイしてゲームプレイへの影響を確かめてみました。
僅かに違和感は残るものの、所謂 ” 音ゲー ” のようなタイミングが重要なゲームも充分プレイ可能ですね。ノイズキャンセラも併用できるので、集中してプレイすることが出来ると思います。
この「ゲームモード」ですが、Xperia XZ1 Compact を使って挙動を確認してみたところ、OFF の状態では AAC で、ON にすると SBC を優先に再生デバイスと接続しようとするようでした。
SOUNDPEATS「Space」の右側イヤーカップの電源ボタンを 3回連続で押下することで「ゲームモード」の ON/OFF を切り替える事が出来るのですが、接続しているコーデックはスマホ/タブレットの側で一旦 Bluetooth を OFF/ON しないと切り替わらないようです。
iPhone / iPad では SBCコーデックで接続しているか、AACコーデックが使われているのかを判別する事が出来ませんが、もしゲームをプレイしていて遅延が気になるようであれば、SOUNDPEATS「Space」がゲームモードになっていることを確認したうえで一旦スマホ・タブレットの Bluetooth機能を OFF/ON してみて下さい。また、動画視聴時に遅延が気になるような場合にもこの「ゲームモード」は有効です。
■ SOUNDPEATS「Space」のコストパフォーマンスは驚異的
SOUNDPEATS「Space」の音の傾向ですが、やや低音強調型ですね。とはいえ、低音が強調されているといっても所謂 ” ドンシャリ ” 型では無く、高音部は特に持ち上げられているような感じは受けませんでした。音楽ジャンルとしてはやはりロック・ポップスなどのビートの利いたノリのいい音楽が向いているでしょうか。アクション映画などの視聴にも良さそうです。
アプリのイコライザーで調整は可能ですが、SOUNDPEATS「Space」の場合は変に弄らないのが一番なんじゃないでしょうか。いろいろ試してみましたが、結局デフォルトの「SOUNDPEATS クラッシック」が一番聞きやすい気がします。更にメリハリが欲しければプリセットの「ロック」を使う感じでしょうか。いずれにせよ、実売 6000円程度という価格帯で販売されているワイヤレスヘッドホンにしては驚異的な音質が実現されているのではないかと思います。
ノイズキャンセラの効き具合は価格なりといったところですかね・・・。ON にすれば確かに効いていることが分かりますが、外音をしっかりシャットアウトしてくれるというレベルには達していません。
「Transparency Mode」は如何にもマイクで集めた音をヘッドホンに流しているといった印象です。かなり全体的に「サーッ」といったホワイトノイズが掛かってしまうので、常用するには厳しいかと。歩きながらヘッドホンを使用したいという需要に向けた機能なのでしょうが、音質的に満足は出来ないでしょうし、イヤホン以上に危険なので、移動中は素直にヘッドホンを外しておくことをお勧めします。
音質的にはノイズキャンセラを ON にしておいた方が安定すると感じました。基本的に常時 ON の状態で使うのがよいかと思います。なんと言ってもノイズキャンセラを ON にしたままの状態で 61時間も連続再生することが出来る程のスタミナがありますからね。
SOUNDPEATS「Space」は、このように有線接続のヘッドホンとしても使用することが出来ます。有線接続時にヘッドホンの電源を入れることは出来ないのですが、ノイズキャンセラはこの有線接続時にも使用可能で、左側イヤーカップの「ANCボタン」を 3秒間長押しすれば ANCモード/トランスペアレンシーモードが ON になり、押す度にモードが切り替わります(OFF にするにはまた 3秒間長押し)。
有線接続すれば当然音質的には有利ですし、遅延とも無縁になるので、ゲームプレイにも最適です。今回は ONKYO の「DAC-HA200」というポタアン を使いましたが、昔の iPhone に付属していた簡易的なもの でも用は足ります(USB Type-C に対応したもの も販売されています)。今は少なくなりましたが、3.5mm ヘッドホンジャックの付いているスマホならそのまま接続する事も出来ますね。
とにかくコストパフォーマンスでは最強レベルの Bluetooth ヘッドホンだと思います。非常に堅実な作りになっていて装着感も良好なので、気兼ねなく普段使いする事が出来るでしょう。但し、やや音漏れがあるようなので、図書館などの静かな場所や、電車・バスなどで使用する場合は他の方の迷惑にならないよう音量にはご注意下さい。
ヘッドホンはずっと有線接続が音質的に有利なのは明らかですし、たとえケーブルの長さや取り回しによる制限を受けるとしても、どのみち音楽を聴いたり映画を観たりする際はほとんど動かないので十分だと思っていましたが、やはりケーブルの煩わしさから解放されるというのは非常に楽ですね。食わず嫌いはやっぱり良くないのだなと改めて実感しました。
「Space」は SOUNDPEATS としては恐らく 2作目のヘッドホンだと思うのですが、完成度の高さには非常に驚かされました。今後 LDAC や aptX HD などの高音質コーデックに対応したヘッドホンも登場してくるのだろうと思いますが、どんなものに仕上がってくるのか楽しみでなりません。