スポーツシューズの名門企業、アシックス(東証プライム市場 証券コード:7936)から株主優待の案内が届きました。権利日は毎年 12月末と 6月末の年 2回です。
それぞれの権利日の時点で普通株式を 100株以上を保有していれば株主優待を受ける権利が付与されますが、株式の保有数と保有継続期間によって受けることの出来る株主優待の内容に差が設けられています。
2023年12月期まではアシックスの直営実店舗で使える割引券と、直営のオンラインストア で使う事の出来るクーポンコードが記載された「冊子」として提供されていたアシックスの株主優待ですが、2024年6月期分から スマホを使った「電子チケット」方式に変更 されています。以前とは使い勝手がかなり変わりましたので、その辺りのことも踏まえてご紹介しておきたいと思います。
■ 1:4 の株式分割に伴って株主優待制度も変更
アシックスでは、2024年12月期 第1四半期決算の発表と同時に 2024年6月30日を基準日とする 1:4 の株式分割と、配当予想の修正が公表されました。また、この株式分割に伴って株主優待制度の内容も変更されることとなりました。
株式分割については 2024年3月末に開催された株主総会 で質疑が出るなど、期待されていた方も多かったことでしょう。株式の流動性は既に十分な水準にあったかと思いますが、株価の上昇によって新たに株主優待の権利取得に必要な 1単元(100株)投資しようとすると 100万円程度の資金が必要になっていましたからね。
株主優待制度については、これまで 300株を基準としていたランクアップの境界が 1,200株へと引き上げられました。1:4 の株式分割を行ったわけですから投資に必要な金額に変わりはありませんが、これはこれまで多くの株式を保有していた方への配慮の表れだろうと思われます。
一方、株主優待の権利取得に必要な最低株式数は 100株に据え置かれました。必要な投資額が 1/4 になったわけですから、投資のハードルはかなり下がりましたね。株式分割を行うとそのまま株主優待の権利取得に必要な最低株式数もスライドする企業もありますから、これは実質的な株主優待制度の拡充と言ってよいでしょう。
この結果、現在の株主優待制度の内容は以下の様になりました。
株式数 / 保有継続期間 | 1年未満 | 1年以上 3年未満 | 3年以上 |
---|---|---|---|
100 株 ~ 1,199 株 | 25% 割引電子チケット | 30% 割引電子チケット | |
1,200 株以上 | 30% 割引電子チケット | 40% 割引電子チケット |
電子チケットはそれぞれ 10回分付与されます。実店舗では、電子チケット 1枚につき購入金額 1万円(税込)までの買い物に利用することが可能です(複数枚利用することで 1万以上の商品にも使用可能)。一方、オンラインショップで使用する場合は、1回の買い物につき電子チケット 1枚で 5万円(税込)までの買い物をすることが出来ます。こちらは 1回の買い物につき 1枚の電子チケットまでしか使用することが出来ませんので、合計金額が 5万円を超える買い物をする際は会計を分けてご利用下さい。
「電子チケット」を利用するにはスマートフォン(またはタブレット)で専用サイトにアクセスし、「株主番号」と「郵便番号」を入力する必要があります。スマホのバッテリー残量が無くなっていたり、電波状況が悪いと電子チケットの表示が出来ないこともあり得るのでご注意を。
- 株主優待電子チケットの取得方法
まずは株主優待電子ケットの取得方法ですが、「株主様ご優待割引についてのご案内」に記載されている QRコードをスマートフォン等のカメラを使って読み取ります。Webブラウザからなら「こちら」からアクセスして頂いても構いません。
「配当金計算書」等に記載されている「株主番号」と株式保有者の住所の「郵便番号」を使ってログインします。前回(2024年6月期)分では株主番号と郵便番号を保存しておく事が出来ず、いざ店頭で使おうとした際に利用出来ないケースがありましたが、LINE と連携させることで「gift wallet」という LINE のアカウントに株主優待チケットが保存されるようになりました。正に Good Job !
株主優待チケットを利用したい時は、LINE アプリから「gift wallet」アカウントを表示させるか、先程の QRコードを改めてスマホで読み取ってログインし、直営店の店頭で使うか、オンラインショップの方で使うかを選択して下さい。
直営店での利用方法
直営店で使用する場合は、全国各地にある「アシックスウォーキング」「アシックスキッズ」「アシックスランウォーク」「アシックスウォーキングアウトレット」「アシックスストア」「ファクトリーアウトレット」「オニツカタイガー」「オニツカタイガーアウトレット」「AcureZ」の各店頭で利用することが可能です。
この場合は、以下の様な画面遷移となります。
画像:アシックス IR資料
利用するチケットを選択すると、「店舗 ID」を入力するよう求められます。ここに店舗のスタッフから伝えられた店舗番号を入力し、「利用済み」とすることでレジにてバーコードを読み取れるようになり、割引券として使用することが出来ます。
やや面倒なのは、チケット毎にこの操作が必要になるという点。直営店ではチケット 1枚につき税込 1万円までの買い物に利用することが可能ですが、例えば 3万円のシューズを買う場合にはチケットを 3枚使う必要があります。つまり、この例では 3回同じ操作を繰り返さないといけないそうです(アシックス法務部に確認済み)。
25~40% という大きな割引を受けるためとは言え、さすがに面倒くさい(笑)。ただ、LINEアプリでチケットを保存することが出来るようになったので、随分使いやすくはなったと思います。
オンラインショップでの利用方法
続いてオンラインショップでの利用方法です。2025年4月現在、「アシックス」「アシックスウォーキング」「アシックス商事」の各オンラインストアで利用することが出来ます。「オニツカタイガー」についても今後利用可能となる予定だそうですが、今のところ導入時期を検討中とのこと。
画像:アシックス IR資料
こちらの場合は、各オンラインストアで利用することの出来る「クーポンコード」が発行されます。1回の買い物につきチケット 1枚で税込 5万円までの支払いに対して割り引きされる点など、こちらの場合は以前からの株主優待と使い勝手に大差は無いと思われます。近くに直営店が無いという方には非常に使いやすい株主優待でしょう。こちらも LINEアプリに保存したチケットを利用することが可能です。
オンラインショップの支払い方法は、各種クレジットカードのほかにデビットカード、代金引換(手数料無料)、GMO後払い(コンビニ、郵便局・銀行で支払い)、Amazon Pay、Apple Pay(iPhone、iPad、Mac の Safari から発注すること)が利用可能です。
「OneASICS」の会員登録を行っておけば 3,000円以上の買い物で送料無料となります(3,000円未満なら 550円)。未登録なら 20,000円以上の買い物をしないと送料無料とはなりませんし、ストア独自のポイントも付与されますので、是非登録しておくことをお勧めします。
ただ、オンラインショップで利用する場合、「アシックスオンラインストア」と「アシックスウォーキングオンラインストア」では別々にアカウントを作成しないといけないようです。この辺りの不便さについては 先日の株主総会 でも質問が出ていたのですが、是非なんとかして欲しいところです。ポイントの融通も効かないんですよね。。。
直営店にせよ、オンラインストアにせよ、使える回数が多いので少額の買い物でも気にせず使っていける点は嬉しいですね。優待割引チケットは、クリアランス商品等にも使用可能な場合もあるそうですが、各ブランドによってチケット利用対象外となる商品もあるとのことですので、実際に利用する際に確認してください。
以前にアシックスの法務部に電話して確認したところ、電子チケットのうち何枚かをオンラインストアで使い、残りを直営店で使うという使い方も問題無いそうです。私としては昨年 11月にリニューアルオープンした「マリンピア神戸」の「アシックスファクトリーアウトレット」でも利用出来るのが非常に有り難いですね。三宮までわざわざ出なくて済みますから(笑)。
■ 長期の株主優待権利を狙う場合の注意点
アシックスの場合は、決算期末日および第 2四半期末日の時点で作成される株主名簿に同一の株主番号で 3回以上載った場合に「保有継続期間 1年以上」と判定され、7回以上継続して載った場合には「3年以上の長期保有」と見做されます。
途中で売買することによって所有株式数が増減しても構いませんが、1株でも持ち続けていれば株主番号が変わることはありませんので、うっかり全部売ってしまっていたという事を避けるためにも「端株」を活用するのも一つの手でしょう。尚、貸株を利用している場合は証券会社や発行会社によっては途中で株主番号が変わってしまう可能性もありますのでご注意ください。
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■ 忘れちゃいけない「隠れ優待」!
実はアシックスには「隠れ優待」も存在しています。
株主総会前に送られてくる「定時株主総会招集ご通知」にアンケートが記載されているのですが、こちらに回答すると 500円相当の ” OneASICS ポイント ” が加算されます(要 OneASICS 会員登録)。回答期限が短い上に招集通知の最後に書かれているので見落としてしまう方も多いかも知れません。このポイント贈呈に関するメールは後日アンケート回答時に登録したメールアドレスに送られてくるそうです。お忘れ無きように!
■ 「アシックス」について
今も神戸に本社とスポーツ工学研究所を構えるアシックスは、1949年に鬼塚喜八郎氏が「鬼塚商会」を立ち上げたことに始まります。「オニツカタイガー」のブランド名でバスケットボールシューズやマラソンシューズを送り出してスポーツ界に認知されるようになり、1977年にオニツカ株式会社、株式会社ジィティオ、ジェレンク株式会社の 3社が対等合併し、総合スポーツ用品メーカー「株式会社アシックス」が誕生しました。
現在の主力製品は各種競技用シューズを初めとするスポーツシューズですが、ウェア類、ビジネスシューズ、アウトドア用品なども取り扱っています。
米国のナイキとの関係については、数年前に話題になったナイキ創業者のフィル・ナイト氏の自伝「SHOE DOG」で恨み節たっぷりに触れられていた(かなりワンサイド的な記述でしたが)一方で、ナイキ側もオニツカの技術者を引き抜いていたりと、色々と因縁があるようですね。
私的には一番走りやすいので、陸上をやっていた頃からほぼずっとアシックスのランニングシューズを履き続けています。数年前には記録を出す陸上長距離の選手の多くがナイキの ” 厚底シューズ ” を履いていた事から、箱根駅伝の出場選手のほとんどの選手がナイキに流れてしまうという事態にまで陥りましたが、アシックスも「メタスピード」シリーズで長距離用厚底シューズに参入し、随分巻き返しました。
2024年12月期は、売上高・利益共に過去最高を大幅に更新する年となり、営業利益は 1,000億円の大台を突破しました。2025年12月期についても元々増収・増益が計画されています。現在進行中の ” 中期経営計画 2026 ” の財務目標は早々に達成され、昨年 11月には営業利益 1,300億円(従来目標 800億円以上)、営業利益率 17% 以上(同 12% 前後)へと更なる上方修正が行われました。
ただ、やはり気になるのは ” トランプ関税 ” の影響。先日開催された株主総会 では、中国への関税が厳しくなったとしても基本的に中国生産分は中国国内での消費に回っているので影響は少ないのではないかとのことでしたが、ベトナム製品への大幅輸入関税強化は想定外だったのではないでしょうか。アシックスでは中国生産からベトナムとインドネシアへの生産切替を進めていたと記憶していますので、この影響は相当なものになるかも知れません。
今年度からは日本各地で「アシックス 個人投資家様向け IR 説明会」が開催されるそうです。神戸での開催は 9月末になりそうですが、経営環境などを知るいい機会になると思いますので、興味のある方は参加してみるとよいでしょう。最新の製品に触れる機会もあるかも知れません。
株主総会から 2週間ほどしてアンケートの謝礼として「隠れ優待」の OneASICS ポイントが 500ポイント分発行されました。「OneASICS」にログインし、メールに記載されているコードを登録することでアカウントに加算されます。
「アシックスストア」店舗、「アシックスファクトリーアウトレット」店舗、「アシックスオンラインストア」での買い物に利用出来ますが、「アシックスウォーキング」「オニツカタイガー」では残念ながら利用出来ないとのこと。株主総会の質疑でも出ていましたが、やはり同じアシックスグループなのでポイントやアカウントは共通化して欲しいですね・・・。