マウスは、PC で作業する上で最も手に触れる機会の多いデバイスでしょう。当然消耗も激しくなるわけで、長く使っていると様々な不具合が生じてきます。特に症状として表れやすいのが ” チャタリング ” で、1回クリックしただけなのにダブルクリックになってしまったり、ファイルをドラッグ&ドロップしようとしても途中で解除されてしまってファイルの移動が出来ないといった不具合じゃないでしょうか。
スイッチの改良で昔と比べればマウスの耐久性もかなり向上しているとは思われますが、電気的なスイッチが使われていればやがて接点の摩耗がチャタリングの原因となり得ます。だったらこの ” チャタリング ” 自体が原理的に起きないようにしてしまおうと、マウスの左右のボタンに「静電容量無接点方式」のスイッチを採用したのが 2020年に東プレが発売した「REALFORCE MOUSE(RFM01U11)」でした。
東プレの「REALFORCE」シリーズのキーボードのユーザーならばこの「静電容量無接点方式」のスイッチが如何に耐久性のあるスイッチかはよく知っていると思いますが、実売約 1.8万円という価格に怯んだ方も多いはず。私もその一人でしたが、東プレによる製品貸与キャンペーンで実際にその使い心地の良さに振れ、その後たまたま正月の特売価格になっていたのを見つけて飛びついてしまいました。 この「REALFORCE MOUSE」、実際に使っているとスルメのようにその良さが身に沁みてきます。静電容量無接点方式のスイッチが採用された左右のメインボタンのクリック感がまた独特で、何よりもカチカチとした音が出ませんので非常に静かです。夜間のカチカチ音って結構気になると思うのですが、これなら家族の目も気にせず使う事が出来ます。
ただ、どうもスクロールホイールの耐久性に問題を抱えているようでした。マウスのホイールには回転を検知するロータリーエンコーダーという部品が使われているのですが、こちらのパーツが摩耗してしまうらしく、ホイールで下方にスクロールさせている途中にビクンビクンと上方へ戻ってしまうという症状がこの 3年間に 2度発生しました。1度目は保証期間内だったので新品交換となったのですが、2度目は DIY で部品交換をしようとして失敗・・・。ハンダを取るのに手間取って基板のパターンを痛めてしまい、ご臨終となってしまいました。
しばらくは 別のマウス を使っていたのですが、比べてみて改めて実感する「REALFORCE MOUSE」の素晴らしさ。昨年の夏頃にモデルチェンジしたことを聞いていたのと、どうしてもあの独特のタクタイル感が恋しくなって結局「REALFORCE RM1 MOUSE」を購入してしまいました。
■ 東プレ「REALFORCE RM1 MOUSE」の外観チェック!
パッケージデザインは相変わらず高級感には欠けますが、以前のモデルよりかなりスッキリしましたね。私はこちらの方が好みです。
今回は販路をかなり絞っているようで、Amazon と楽天の直営 Webショップの他は、ビックカメラとふるさと納税の返礼品としてくらいしか新品で入手する手段が用意されていないようです。
中身も非常にシンプル。マウス本体の他は簡単な取扱説明書とユーザー登録カードが入っているだけです。購入後 1ヶ月以内にユーザー登録すれば保証期間が 2年間に延びるので、忘れず登録しておきましょう。もちろんホイールの不具合にも対応してくれます(改善されていると信じたいですが)。
マウスの形状は 5つのボタンにクリック可能なホイールが付いた非常にオーソドックスな有線タイプ。前作同様、Microsoft の定番と呼ばれたマウス「IntelliMouse Explorer 3.0」を意識して日本人の手のサイズに馴染むようワンサイズ落とす感じで再設計されたデザインを踏襲しているそうです。
「REALFORCE RM1 MOUSE」の主な仕様は以下の通り。
左右ボタン | 静電容量無接点方式スイッチ(5000 万回以上の耐久性) |
センサー | PixArt PMW3360 |
DPI | 100 〜 12,000(100 dpi 単位で調節可能) |
最大加速 | 50 G |
レポートレート | 125 / 500 / 1000 Hz(ソフトウェアにより変更可能) |
本体サイズ | 67x122x42 mm |
重量 | 約 83 g(ケーブル除く) |
マウスの心臓部と言える光学センサーには、前モデル同様、台湾 PixArt社の「PMW3360」という、所謂ゲーミングマウスに広く採用されているものが使われています。マウスの解像度を示す「DPI(Dots Per Inch)」は 12,000 DPIにまで設定することが可能で、繊細な動きも検知してくれます。尤も、闇雲にセンサー感度を上げてもマウスカーソルが過敏に飛びすぎて使いにくくなってしまうだけですので、画面の解像度に合わせた設定を探ってやるとよいでしょう。
ホイールには改良が加えられているとのことですが、ロータリーエンコーダーに変更でもあったのでしょうか?恐らく内部の基板に変更はほとんど無いだろうと思います。初代の本体カラーはブラックのみでしたが、「RM1」ではダークグレーとスーパーホワイトの 2色から選べるようになっています。前モデルもそうでしたが、設計開発から生産まで一貫して日本の工場(相模原)で行っているというマウスは他に無いんじゃないでしょうか。
新型(左)と旧型(右)を見比べてみました。マウスソールの色こそ変わっていますが、センサーやソールの配置などにも変更はありませんね。旧型の方にあったレポートレートの物理的な切替スイッチのみ省略されました(新型ではソフトウェア上で切り替え可能)。サイドボタンのクリック感はかなり良くなりました。なんというか、しっかりして静かになったという感じです。
■ 専用カスタマイズソフト「REALFORCE CONNECT」
「REALFORCE RM1 MOUSE」には専用の(と言ってもキーボードと共通ですが)カスタマイズ用ソフトウェアが用意されています。ダウンロードは「こちら」から。Windows 10 以上を搭載した PC と macOS 10.15以上を搭載した mac で利用可能です。
「REALFORCE CONNECT」というソフトはランチャーになっているらしく、デバイスリスト上で「RM1 MOUSE」を選択するとマウスの設定画面が開きます。恐らくキーボードの設定画面と分かれているのでしょう。ちなみに私が使っているキーボードも REALFORCE なのですが、8年近くも前の機種 なため「REALFORCE CONNECT」では認識されません。東プレのキーボードって、とにかく丈夫で全然壊れないのですよね・・・(苦笑)。
「ボタン 6」のみ元々割り当てられていた「DPI 変更」機能から「Home」ボタンに機能をカスタマイズしています。これだと Webブラウザをスクロールダウンしても一発で先頭に戻れて便利なのですよね。LED はカスタマイズ出来る項目が増えましたが、ここは個人的にはどうでもいいかな・・・。DPI の設定は 4K ディスプレイ で使用するため 5500 DPI と少し高めに設定しています。
「リフトオフ・ディスタンス」は、マウスを持ち上げた場合にセンサーが反応しなくなる距離の事です。「High」の状態ではマウスを机から少し浮かせた状態でもカーソルが反応するようになります。
変更した設定はマウス本体のオンボードメモリに記憶させておくことが出来るようになっています。「保存」しなければ元に戻ってしまいますので書き込みを忘れないように。このほか、ファームウェアの更新もこちらのソフトを使って行うことになります。
■ 慣れてしまえば手放せなくなるマウス
初めて使った際は独特のクリック感のあるメインボタンに戸惑うかも知れませんが、壊れてしまった初代機の使い心地が忘れられず二代目を購入した私の様に、慣れてしまうと手放せなくなってしまうマウスだと思います。日本人の手に合うよう設計されたマウスのサイズ感も絶妙です。
惜しいのは、販路を絞ったことで実際に触って体験してみる機会がほとんど無くなってしまったであろうことですね。展示があるとしたらビックカメラくらいでしょうか。独特のフィーリングを持つこの「REALFORCE RM1 MOUSE」は特に自分の手で実際に感触を確かめてみてほしいもの。どれ程言葉を尽くそうと、なかなか伝わらない部分だと思います。
前モデルより価格が下がったとは言え、やはりかなり高価格帯のマウスである事は確か。飛びつくには勇気が要るかも知れませんが、価格に見合った満足感は得ることの出来る製品だと思います。高品質な有線マウスを探しているのなら是非候補に加えてみて下さい。